中華民国海軍陸戦隊

中華民国海軍陸戦隊の歴史と組織

中華民国海軍陸戦隊（Republic of China Marine Corps）は、中華民国海軍に所属する陸上戦闘部隊であり、揚陸作戦、上陸阻止、領土奪還、台湾本島および離島の防衛、軍事施設警備を主な任務としています。日本語では「中華民国海兵隊」とも表記されます。

沿革

北洋政府時代の陸戦隊

清朝海軍や革命軍の陸戦隊は、その後の時代に引き継がれることなく解散したため、北洋政府の陸戦隊はゼロからのスタートとなりました。1912年4月に警衛隊が設立され、徐々に規模を拡大し、1914年には2個大隊に改編、北京と上海に駐留しました。臨時編成の「陸戦団」も存在していました。

1922年、海軍総司令官に杜錫珪が就任すると、福建省では督軍・李厚基の権力が弱まり、民衆の暴動が発生するなど混乱が続いていました。杜錫珪は兵力を福建平定に派遣し、陸戦隊は臧致平の反乱や護法軍政府との対峙を経て、直隷派の防衛線である福州を維持しました。杜錫珪の庇護の下、陸戦隊は2年で旅団規模に成長しました。

しかし、1924年の第二次奉直戦争で直隷派が敗北し、杜錫珪が失脚すると、陸戦隊は圧力を受け、1925年には大隊規模に縮小されました。その後、楊樹荘が海軍総長に就任し、旅団が復活。年末には、国民革命軍に帰順し、孫伝芳軍の掃討に参加しました。

広東軍政府の陸戦隊

一方、広東軍政府では「中華革命黨海軍陸戰隊」が設立されました。しかし、第一次護法運動の失敗後、拡充されたものの、陳炯明の反乱により接収され消滅。1924年に再興されましたが、広州暴動に兵士が参加したため解散し、元駐閩陸戦隊が充てられました。

国民政府成立後、海軍の大規模な改革は行われず、主力艦艇の壊滅後は目立った活躍もなく、各部隊は戦後に解散し、陸軍に編入されました。現在の陸戦隊の形となったのは、戦後のことです。

年譜

北洋海軍陸戦隊

1912年4月：北洋政府海軍部が警衛隊を設立。
1913年2月：2個中隊に拡充。
1914年12月：海軍陸戦大隊に改編。
1918年7月：2個大隊8個中隊体制となる。

閩系海軍陸戰隊

1922年10月：杜錫珪が陸戦隊を福建に派遣。
1923年1月：海軍陸戦隊統帯部が成立。
1923年5月：暫編第1混成旅に改編。
1924年4月：海軍陸戦隊講武学校が開校。
1925年10月：旅団が解体され大隊に縮小。
1926年1月：旅団に復編。
1926年12月：国民革命軍海軍陸戦隊司令部を成立。
1927年1月：福建陸軍の残存兵力を接収し、2個暫編独立団とする。
1927年8月：2個混成旅および4個団を編成。

東北海軍陸戦隊

1928年12月：成立。青島、煙台、長山八島などに駐留。
1930年10月：中東路事件で壊滅。
1931年：再編を図るも、満州事変で消滅。

青島海軍陸戦隊

1928年：東北海軍陸戦隊の一部隊として設立。
1937年7月：海軍陸戦総隊となる。

護法軍海軍陸戦隊/国民革命軍海軍陸戦隊

1915年12月：「中華革命党海軍陸戦隊」成立。
1924年：広東海軍、陸戦隊を再編。
1927年12月：広州暴動後、陸戦隊解散。

国民革命軍海軍陸戦隊歩兵第一旅

1927年8月：福建海軍陸戦隊第一混成旅歩兵第三団を改編。
1928年2月：解消、第二独立旅に再編。

国民革命軍海軍陸戦隊歩兵第二旅

1927年8月：歩兵独立団を拡充し成立。
1929年：解消、第一独立旅に再編。

国民革命軍海軍陸戦隊歩兵補充団

補充第一団：1927年末、閩廈警備司令部衛隊営を改編。
補充第二団：1928年末、閩南沿海各県の鹽務緝私隊を改編。
第三、第四補充団：1928年2月成立。
砲兵営：1928年2月成立。

海軍陸戦隊第一独立旅

1929年編成。
1933年：海軍廈門要港護砲台教導総隊を併合。
1945年6月：解散、陸軍に編入。

海軍陸戦隊第二独立旅

1929年編成。
1945年6月：解散、陸軍に編入。

海軍警備隊

1945年8月：上海にて成立、のち陸戦隊に編入。

整編時期

1946年：中華民国陸軍が設立。
1947年：海軍陸戦隊大隊が発足。
1948年：陸戦第1、第2、第3連隊を統合。
1949年：陸戦第2旅団と上海陸戦隊司令部を成立。
1950年-1952年：輸送車大隊、海軍陸戦隊学校を増編。
1953年：富台部隊を編制。
1955年：陸戦第1師団に統合。
1957年：陸戦隊士官学校、艦隊陸戦隊司令部を設立。
1966年：陸戦第2師団に統合。
1969年：登陸戦車団に変更。
1971年：陸戦隊医院、憲兵連成立。
1984年：陸戦第77師団を解散。
1986年：海軍陸戦隊学校、陸戦隊士官学校を合併。
1997年：精実案が施行。
2004年：精進案が施行。
2006年：海軍陸戦隊司令部を海軍陸戦隊指揮部に名称変更。

組織

現在、陸戦隊は中華民国海軍の下に置かれ、約9000人の人員を擁しています。陸戦隊員は、中華民国海軍陸戦隊学校で育成されます。対ハイジャックや対テロなどの任務に就く海軍陸戦隊特勤隊も編成されています。兵力削減の動きもありますが、政府は陸軍編入を否定しています。

組織構造

中華民国海軍司令部
海軍陸戦隊指揮部
陸戦旅団（3個旅団）：陸戦第66旅団「先鋒部隊」、陸戦第99旅団「鐵軍部隊」、陸戦防空警衛群「鐵衛部隊」
直属専業大隊：両棲偵捜大隊、登陸戦車大隊、支援中隊
戦闘支援大隊：通電中隊、通資中隊、灘勤中隊、岸勤中隊、衛勤中隊、補保中隊、運輸中隊、支援中隊
烏坵守備大隊
三軍聯訓基地
海軍陸戦隊学校
海軍陸戦隊新訓中心

装備

戦車

M60A3戦車

水陸両用装甲車

LVTP-5
LVTH6-A1
LVTE1
LVTR1
LVTP5A1
AAV7
CM-25

対戦車車両

CM-25

戦闘車輌

M998
CM-24

後方支援車輌

中型戦術輪車
2500ガソリン車

火砲

M101榴弾砲

自走榴弾砲

M109自走榴弾砲

ヘリコプター

マクドネル・ダグラスMD 500 ディフェンダー

無人機

紅隼Ⅱ 無人偵察機

機関砲

T-75 20mm機砲

防空

FIM-92刺針飛弾
RIM-72C海欉樹飛弾
MIM-72/M48欉樹飛弾

単兵武器(歩兵用装備)

拳銃：M1911手槍、T75手槍
短機関銃：烏茲衝鋒槍、MP5A5衝鋒槍、SIG MPX
アサルトカービン：M4A1突撃歩槍
自動小銃：T65K2、T91戦闘歩槍、M16A1突撃歩槍
狙撃銃：SIG Sauer SSG 2000、T93狙撃歩槍
機関銃：T75班用機槍、T74排用機槍
グレネードランチャー：T85擲弾発槍
対戦車ロケット：M40A1火砲、51式106mm無後座力砲、紅隼対戦車ロケット、SMAW反裝甲火箭
対戦車ミサイル：FGM-148 ジャベリン、TOW-2A,TOW-2B

多人操作武器

迫撃砲：63式120mm迫撃砲、T-75 81mm迫撃砲
自動擲弾銃：Mk19榴弾発射器

関連項目

陸戦隊・海軍陸戦隊：日本海軍の臨時の陸上戦闘部隊。

参考文献

海軍省海軍軍事普及部「海軍陸戦隊の話」
『PANZER』第546号、アルゴノート社、2013年
金智『青天白日旗下民國海軍的波濤起伏(1912-1945)』獨立作家出版、2015年
中華民国国防部“中華民國海軍陸戰隊發展史”
戚厚杰編『国民革命軍沿革実録』河北人民出版社、2001年

もう一度検索