LVTP-5

LVTP-5：アメリカ海兵隊の水陸両用装甲兵員輸送車

LVTP-5（Landing Vehicle Tracked, Personnel - model5）は、アメリカで開発された水陸両用の装甲兵員輸送車です。公式な愛称はありませんが、アメリカ海兵隊では「アムトラック」と呼ばれ、兵士からは「Swamp Rat（沼ネズミ）」という愛称で親しまれていました。

開発の経緯

第二次世界大戦で使用されたLVTシリーズの後継として、1946年から開発が始まりました。当初は各社から様々な試作車が提案されましたが、予算や性能の問題から計画は一時中断されました。しかし、朝鮮戦争の勃発により新型水陸両用装甲車の開発が急務となり、LVTシリーズで得られた技術を基に開発が再開されました。

開発にあたっては、搭載能力の大きさ、一定の装甲、そして90mm以上の火力を備えた火力支援車の必要性が重視されました。エンジンには、M26パーシング重戦車で使用されていたものと同型のコンチネンタル AV-1790-1 V型12気筒空冷ガソリンエンジンとアリソン CD-850-4オートマチックトランスミッションが採用されました。

1951年には、火力支援型、人員輸送型の試作車が完成し、その後、指揮車型と回収・整備車両型が開発されました。1952年から量産が開始され、部隊への配備が進められました。

1956年からは、駆動装置や給排気装置の改良、暗視装置の搭載など、各部を改修した改良型LVTP-5A1が登場し、既存車両の改修と更新が進められました。

構造と特徴

LVTP-5は、上陸作戦時に沖合の揚陸艦から発進し、海上を航行して海岸に兵員を輸送することを目的として開発されました。上陸後は、通常の装甲兵員輸送車としても運用されました。

幅広の履帯と多数の小型転輪を組み合わせた足回りを備えており、水上航行時には、履帯に設けられた水掻きによって推進力を得ます。

実戦投入と評価

LVTP-5シリーズは、ベトナム戦争に投入されましたが、大型の車体が目立ちやすく被弾しやすいこと、装甲が薄いこと、そして武装が貧弱であることから、大きな損害を出しました。特に、7.62mm機関銃1丁のみという武装は、下車した兵員を援護するには火力不足でした。そのため、現地では12.7mm重機関銃や無反動砲を搭載する改造が広く行われました。

また、ガソリンエンジンを使用していることや、燃料タンクが兵員室の床下にある構造から、地雷にも弱く、人員輸送時には兵員が車上に乗っていることが多かったようです。

しかし、LVTP-5が抱えていた問題は、上陸用装甲車という車種の本質的な問題でもありました。元来、LVTは陸上を長距離・長時間走行し、敵部隊を攻撃することを想定して開発されたわけではなく、あくまで「沖合の揚陸艦から兵士を海岸に輸送する際に、ある程度の装甲防御を与える」ためのものでした。

ベトナム戦争での戦況の変化に伴い、LVTP-5の運用機会は減少し、1974年には後継のLVTP-7（現：AAV7）に更新され、アメリカ海兵隊から退役しました。

各型と派生型

LVTP-5：基本型
LVTP-5A1：改良型
LVTCR-1：装甲指揮車型
LVTC-5A1：LVTCR-1の改良型
LVTH-6：火力支援車両
LVTH-6A1：LVTH-6の改良型
LVTR-1：装甲回収車型
LVTR-1A1：LVTR-1の改良型
LVTE-1：地雷処理車型

運用国

アメリカ合衆国
中華民国（台湾）
フィリピン
チリ
ベトナム共和国

LVTP-5は、その開発経緯や構造、そして実戦での評価を通じて、水陸両用装甲車の課題と可能性を示した車両と言えるでしょう。

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