中華民国臨時大総統

中華民国臨時大総統とは

中華民国臨時大総統（ちゅうかみんこくりんじだいそうとう）は、1912年1月1日から1913年10月10日まで存在した、中華民国臨時政府の元首の職です。この名称にある「臨時」という言葉は、辛亥革命の最中であり、清朝も依然として存在していた時期に、各省の代表によって選出された職であることを示しています。正式な憲法が制定されていなかった状況下で、正式な大総統を選出することが困難であったため、「臨時大総統」という名称が用いられました。

成立の背景

1911年、辛亥革命が勃発し、各地で清朝からの独立を宣言する動きが広がりました。11月14日、江蘇都督の程徳全は、アメリカに滞在していた孫文に帰国を要請する電報を送りました。各地の軍政府からも孫文を指導者として推す声が相次ぎ、臨時政府の樹立に向けた動きが加速しました。

11月15日には、各省の代表による会議「各省都督府代表連合会」が設立され、湖北軍政府を中央軍政府として承認しました。12月2日には「臨時政府組織大綱」が制定され、臨時大総統選挙に関する規則が定められました。同日、革命軍が南京を占領し、各省代表団は南京を臨時政府の所在地と定めました。

12月4日、同盟会は立憲派の支持を得て、黄興を大元帥に選出しました。12月11日から13日にかけて、武漢と上海の代表団が南京に到着し、12月14日から会議が始まり、臨時大総統の選出が12月16日に承認されました。

初代臨時大総統：孫文の選出と就任

12月15日、浙江代表団の陳毅が「袁世凱が共和制国家に賛成している」と報告したため、代表団は袁世凱を待つことにしました。しかし、臨時大総統選挙を延期して、上海の代表会が選出した大元帥と副元帥を承認し、「臨時政府大綱」に「臨時大総統が選出されるまで、その権限は一時的に元帥が代行する」という一文を追加しました。12月17日に黄興は大元帥を辞職しましたが、副元帥の黎元洪が一時的に到着できなかったため、黄興が引き続き職務を遂行しました。12月25日に孫文が上海に到着し、翌26日に臨時大総統候補に選ばれました。

12月29日、17省の代表による臨時大総統選挙が実施され、孫文が16票を獲得して中華民国臨時大総統に選出されました。1912年1月1日、南京で就任式典が行われ、孫文は宣誓を行いました。同日、中華民国臨時政府が正式に成立しました。

清朝の滅亡と袁世凱への権力移行

しかし、依然として北京には清朝政府が存続しており、中国は南北二つの中央政府が並立する状態にありました。1月12日、袁世凱は清朝の皇室に対して政権の放棄と宣統帝の退位を求めました。この間、孫文は袁世凱との対立を深め、様々な条件を提示しましたが、袁世凱は北京への臨時政府移転を主張し対立しました。孫文は、袁世凱が皇帝を退位させ、清朝を消滅させること、臨時政府を北京に移転させないこと、皇帝が退位したら各国に中華民国の承認を要求すること、孫文が参議院に臨時大総統職の辞表を提出すること、袁世凱を後任の臨時大総統に選出することを提示しました。

1月22日、孫文は南北和議の舞台裏を暴露し、袁世凱を不快にさせました。この時期、孫文は日本からの融資を得て袁世凱との戦いを試みましたが、実行には至りませんでした。袁世凱は事態を鎮静化させるために中国同盟会から多くのメンバーを入閣させることに同意しました。

2月12日、隆裕太后は宣統帝退位詔書を公布し、清朝は滅亡しました。2月13日、袁世凱は臨時政府に電報を送り、条件に従って孫文は辞表を提出しました。2月15日に臨時大総統選挙が行われ、袁世凱が選出されました。3月8日には政体を大統領制から議院内閣制に改める「中華民国臨時約法」が成立しました。3月10日、袁世凱は北京で臨時大総統に就任し、4月1日に孫文は正式に臨時大総統を退任しました。そして、1913年10月6日に行われた大総統選挙で袁世凱が選出され、10月10日に初代中華民国大総統に就任しました。

臨時大総統の意義

中華民国臨時大総統という職は、辛亥革命によって生まれた新しい国家の黎明期において、非常に重要な役割を果たしました。その存在は、清朝の滅亡と中華民国の成立という激動の時代を象徴するものであり、その後の中国の歴史に大きな影響を与えました。特に、孫文から袁世凱への権力移行は、中華民国の複雑な政治状況を浮き彫りにする出来事であり、後の歴史にも大きな影響を与えました。

この役職は、短期間ではありましたが、中華民国の将来を決定づける上で、非常に重要な意味を持っていたと言えるでしょう。

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