中道往還

中道往還（なかみちおうかん）

中道往還は、かつて甲斐国（現在の山梨県）と駿河国（現在の静岡県）を結んでいた重要な街道の一つです。甲州[[街道]]から分岐し、富士山の麓を通り、東海道へと繋がるこの道は、単なる交通路としてだけでなく、文化や経済の交流においても重要な役割を果たしました。

地理

中道往還は、甲府から南下し、落合町で笛吹川を渡ります。右左口宿（うばくちじゅく）を経由し、右左口峠（迦葉坂）を越えて、古関、精進湖、本栖湖の東岸を通り、駿河国へと入ります。根原、人穴宿を経て、上井出宿で若彦路と合流し、さらに大宮を経て東海道に合流し、吉原宿（現在の静岡県富士市）に至ります。また、精進や本栖からは、河内や郡内方面へも道が続いています。

主なルートは以下の通りです。

甲府 - 右左口 - 柏尾坂 - 女坂 - 古関 - 精進 - 本栖 - 根原 - 人穴 - 大宮 - 厚原 - 吉原湊

歴史

中道往還は、古代から人々の往来に使われていたと考えられています。沿道からは、畿内地方の文化の影響を受けた古墳時代の遺物が発見されており、東海地方からの文化の流入路であったことを示唆しています。

中世には、この道は軍事的な重要性も持ちました。治承・寿永の乱の際には、武田信義や安田義定らがこの道を通って富士山麓を移動したという記録が残っています。戦国時代には、駿河の今川氏が甲斐へ侵攻する際にこの道を利用し、武田氏は本栖城を築いて防衛を固めました。右左口には、武田氏が築いたとされる金刀比羅山砦跡が残っています。

江戸時代には、徳川家康がこの道を整備し、右左口に滞在した際には、村人に所役免除を行ったと伝えられています。また、この道は、駿河湾で水揚げされた海産物を甲府へ運ぶ重要なルートとなり、アワビの煮貝などの名産品を生み出すきっかけにもなりました。近世には脇往還として、右左口、精進、上井出に宿場が設けられ、本栖には口留番所が設置されました。しかし、明治時代以降、鉄道の開通などにより、この街道の重要性は低下しました。

文化財

中道往還沿いの右左口地区には、貴重な文化財が残されています。右左口区有文書及び関連資料一括は、山梨県の有形民俗文化財に指定されており、徳川家康の朱印状や村の記録、人形芝居の用具などが含まれています。特に、徳川家康の朱印状は、葵紋が施された石櫃に納められ、厳重に保管されていたそうです。また、右左口人形芝居は、村の若者たちによって演じられ、その人形は駿府や由比で作られていたことがわかっています。

右左口峠

中道往還の主要な峠道である右左口峠は、甲府盆地と精進湖を結ぶ御坂山地の中央部に位置しています。かつては、この峠道が甲斐と駿河を結ぶ最短ルートであり、海産物などを運ぶ人々で賑わっていました。峠の直下には国道358号の右左口トンネルが通っていますが、旧道である迦葉坂は、現在も県道113号として残されており、古道の名残を今に伝えています。右左口峠には、かつて自衛隊によって作られた車道が残っていますが、現在では舗装されておらず、通行には注意が必要です。

右左口宿

右左口峠の麓には、古い宿場の風情を残す右左口宿があります。この地は、歌人の山崎方代の生家跡としても知られ、現在は記念碑が建てられています。この宿場は、中道往還における重要な拠点であり、多くの旅人や物資の輸送で賑わったと伝えられています。


中道往還は、その歴史的、文化的価値から、今なお多くの人々に注目されています。かつてこの道を通った人々の足跡をたどりながら、当時の文化や歴史に触れてみるのも良いかもしれません。

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