武田信義

武田信義：甲斐源氏を率いた武将の生涯

武田信義は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した、名高い武将です。源氏の一族であり、甲斐源氏の初代当主として、その名を歴史に刻みました。本稿では、彼の生涯、特に源頼朝との関係性や、富士川の戦いにおける役割など、詳細にわたって解説します。

生い立ちと甲斐源氏の継承

信義は、大治3年（1128年）、源清光の次男として誕生しました。逸見光長とは異母兄弟にあたります。幼少期は龍光丸、勝千代といった幼名で呼ばれていました。保延6年（1140年）、13歳の時、武田八幡宮で元服し、「武田太郎信義」と名乗り、甲斐源氏の家督を継承しました。武田八幡宮は、その後甲斐武田氏の氏神として崇敬されることになります。武田氏のルーツは、源義光の子である源義清が常陸国武田郷から甲斐国に配流されたことに始まります。

治承・寿永の乱と富士川の戦い

治承4年（1180年）、信義は以仁王の令旨を受け、挙兵したと推測されています。『山槐記』には、信義が甲斐国を領していることが記録されています。石橋山の戦いの直後には、安田義定らと共に平家方勢力を破る活躍も見せています。同年9月には、信濃国伊那郡へ出兵し、平家方の武将を討ち取るなど、その武勇を遺憾なく発揮しました。

富士川の戦いでは、源頼朝と連携し、平氏軍を撃破する大きな勝利に貢献しました。この戦いは信義の軍事力と戦略眼の高さを示すものと言えます。その後、信義は駿河を掌握し、その勢力を拡大していきます。『吾妻鏡』には、頼朝が信義を駿河守護に任命したとありますが、実際には信義自身の力によって駿河を支配下に置いたとされています。

源頼朝との複雑な関係

治承・寿永の乱初期において、信義は源頼朝、源義仲と共に東国の主要な勢力として並立していました。しかし、頼朝が武家の棟梁としての地位を確立しようとするにつれ、信義との間には緊張感が高まっていきます。信義の弟や子息の一部は頼朝に接近し、一方、信義自身は義仲との連携も模索するなど、その立場は複雑でした。

一ノ谷の戦い、壇ノ浦の戦いなど、主要な戦いで頼朝方として戦いますが、頼朝は信義の勢力を完全に掌握しようとします。信義の子、一条忠頼が鎌倉で暗殺された事件や、信義への圧力など、両者の関係は険悪さを増していきます。最終的には、甲斐源氏は頼朝の支配下に組み込まれていきます。

晩年とその後

『吾妻鏡』によると、信義は文治2年（1186年）に死去したとされていますが、その後も生存していた可能性を示唆する記録も存在します。信義の死後、家督は五男の信光が継承しました。信義の墓は、山梨県韮崎市神山町鍋山の願成寺にあります。

武田流と後世への影響

信義は、兵学や弓道の流派である武田流の創始者とも伝えられています。また、彼の16世の孫にあたる武田信玄は、戦国時代の有名武将として知られています。信義は、甲斐武田氏の基礎を築き、後世の武田氏繁栄の礎を築いたと言えるでしょう。彼の生涯は、平安時代末期から鎌倉時代初期の動乱期における武将の生き様を示す重要な事例として、現在も研究が続けられています。

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