人穴

人穴（ひとあな）

概要

人穴は、静岡県富士宮市にある富士山の噴火によってできた溶岩洞穴です。富士山の西麓、犬涼山の端に位置し、主洞は高さ1.5m、幅3m、奥行き約90mの規模を持ちます。

洞穴の壁には、肋骨や乳房のような岩の突起が見られることから「人穴」と呼ばれるようになったとされています。また、洞穴の最奥からはさらに細い穴が伸びており、神奈川県の江ノ島まで繋がっているという伝説も存在します。

江戸時代には、富士信仰の修行の場として聖地とされ、富士講の開祖である角行がこの地で修行を行ったと伝えられています。富士講の信者たちは富士登山後に人穴へ参拝し、宿泊することもあったそうです。現在でも洞内には、当時のものとされる石仏が安置されています。

興味深いことに、人穴は富士山の中心から西に約12kmの位置にあり、一方、東に約12kmの位置には東口本宮冨士[[浅間神社]]があります。これらは富士山を挟んで正反対の位置にあり、それぞれが富士山との間に均等な距離を保っています。

人穴の周辺には「冨士浅間大神」と刻まれた碑や、少し離れた森の中には大日堂が存在します。また、洞穴内部にも浅間大神の碑が安置されています。

富士宮市人穴地区

人穴を含む地域は、近世には人穴村や人穴宿と呼ばれていました。甲斐国（現在の山梨県）へ通じる甲州街道と郡内道（人穴道）が交差する地点であり、上井出宿と本栖宿の間にある「間宿」としての役割も担っていました。この地域は江戸幕府の直轄地（天領）でした。

現代では、1988年にオウム真理教がこの地に富士山総本部を構えたものの、地下鉄サリン事件後の住民の抗議により1996年に撤退しました。その後、2006年には日本盲導犬協会の訓練施設「盲導犬の里 富士ハーネス」が開設され、現在に至ります。

歴史

鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には、人穴に関する記述があります。それによると、鎌倉幕府第二代将軍源頼家が建仁3年(1203年)に富士の巻狩を行った際、人穴を新田忠常（仁田忠常）に調査させたとの記録があります。忠常が洞内で災難に遭った後、「是浅間大菩薩御在所」と記され、人穴が浅間大菩薩の聖地であったことが示唆されています。

また、『吾妻鏡』に影響を受けた御伽草子『富士人穴草子』には、「富士のせんげんとはわが事なり」という記述があり、これらの信仰的な要素が、角行が人穴で修行を行った理由の一因となったと考えられます。

アクセス

人穴へのアクセスは、以下のルートが一般的です。

東名高速道路富士IC→西富士道路→国道139号→静岡県道・山梨県道71号富士宮鳴沢線
中央自動車道河口湖IC→国道139号→静岡県道・山梨県道71号富士宮鳴沢線

脚注

人穴は、富士山の噴火活動によって形成された溶岩洞穴である。
人穴は、古くから富士信仰の聖地として知られている。
現在は、盲導犬の訓練施設が隣接している。

関連項目

人穴[[富士講遺跡]]

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