中郷温水池

中郷温水池と源兵衛川

概要

中郷温水池は、静岡県三島市富田町に位置する農業用ため池です。2010年には、農林水産省の「ため池百選」にも選定されました。この池の水源は、三島駅近くの楽寿園内にある小浜池の湧水です。室町時代、地域の豪族であった寺尾源兵衛が、市内11カ村を灌漑するために源兵衛川を掘削しました。中郷温水池は1953年に建設され、源兵衛川の終点に位置し、温められた湧水を下流の13集落、216ヘクタールの農地に供給しています。1990年以降、農林水産省の事業により、多自然型工法を用いた水辺再生が行われ、護岸は自然豊かな姿に生まれ変わり、散策路や緑地帯も整備されました。

源兵衛川

源兵衛川は、全長1.5キロメートルの一級河川で、楽寿園内の小浜池を水源として中郷温水池に注いでいます。この川の名前は、水路を計画した寺尾源兵衛に由来します。楽寿園から広瀬橋までは広瀬川とも呼ばれます。農業用水路として人工的に開削された川で、かつては人々の生活に密着した存在でした。近年、川は自然生態系の軸として、また憩いの場として活用されるようになっています。三島市は古くから「水の都」と呼ばれ、市内には湧水が豊富です。

2004年には、土木学会デザイン賞最優秀賞を受賞しました。

歴史

農業用水路時代

源兵衛川は、地域の農業用水として利用されていました。湧水は水温が低かったため、中郷温水池で温めて利用していました。また、生活用水としても利用され、川岸の家庭では川端を作り、ブリキの船で食品を冷やすなど、冷蔵庫の代わりにも使われていました。

都市工業化による水辺環境の悪化

1960年頃から、企業の揚水によって水量が減少し、生活排水の流入により水質汚染が進みました。川は人々の生活から遠ざかり、水辺環境は悪化しました。

環境改善の時代

上流地域の産業活動の活発化により、地下水や湧水が減少し、不法投棄も増えました。そこで、市民が中心となり、行政、NPO、企業が協力して、川の再生に取り組みました。1990年からは「水の都三島」を復活させるべく、水環境整備事業が開始されました。調査の結果、盆行事や浜降りといった風習、橋や川端など、川と人の密接な関わりが再発見され、川の再生の糸口となりました。フィールドワークやアンケート調査を通じて、計画の基本となる三つの原則が策定されました。

1. 川と人の新たな関わりを形として示す
2. 保全、復元、改修、創造など柔軟な対応を行う
3. 地域の景観を構成する地場の溶岩を多様に活用する

事業区間は、楽寿園の小浜池から温水池までの1.5kmで、商業地、住宅地、水田地帯など、川沿いの景観は変化に富んでいます。

現在

源兵衛川水環境整備事業は7年間で終了しましたが、現在は「町中がせせらぎ事業」として引き継がれ、市民、企業、行政、活動団体が協力し、川の再生やまちづくり活動が進められています。その活動は都市景観大賞や手づくり郷土賞を受賞するなど、活発な人づくりの輪が広がっています。2008年には「平成の名水百選」、2006年には「疏水百選」に選ばれました。また、2012年には伊豆半島ジオパークのジオサイト、2016年には国際かんがい排水委員会のかんがい施設遺産に登録されました。

施設

橋

源兵衛川には12の橋が架かっています。

いずみ橋
芝橋
広瀬橋
源兵衛橋（源平白旗橋）
時の鐘橋
源兵衛橋
下源兵衛橋
川蝉橋
温水橋
君ヶ沢橋
温泉池橋
よしず橋

生態系

源兵衛川には、ミシマバイカモ、ヤナギモ、セリ、セキショウなどの植物が生息しています。

自然・保護活動

中郷温水池の南岸からは、水面に逆さ富士が映ります。この景観は、2006年に静岡県景観賞最優秀賞を受賞しました。三島市とNPO法人グラウンドワーク三島が協力して保全活動を行っており、源兵衛川とともに自然植生が再生しています。川の中州は、メダカやトウヨシノボリ、ホトケドジョウ、ミナミヌマエビなどの多様な動植物の生息場所となっており、現在では100種類以上が生息しています。

アクセス

道路

国道136号

公共交通機関

JR三島駅下車
伊豆箱根鉄道駿豆線三島田町駅下車

脚注

注釈

なし

出典

三島市公式ウェブサイト「中郷温水池」
農林水産省「ため池百選」
NPO法人グラウンドワーク三島「中郷温水池」

関連項目

狩野川
ため池百選
水の郷百選
疏水百選
平成の名水百選
楽寿園
千貫樋
丸池 (静岡県)
柿田川

外部リンク

三島市公式ウェブサイト「中郷温水池」
農林水産省「ため池百選」
NPO法人グラウンドワーク三島「中郷温水池」

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