丸山千枚田

丸山千枚田：歴史と自然が織りなす絶景

丸山千枚田は、三重県熊野市紀和町丸山地区に位置し、白倉山の南西斜面を利用した棚田群です。一般的に「千枚田」と呼ばれていますが、実際には高低差160mの谷間に約1340枚もの棚田が広がっています。最も小さな田はわずか0.5平方メートルという、非常に小さなものも存在します。棚田の法面は、西日本に多く見られる野面積みの石積みで構成されています。

歴史

丸山千枚田の起源は明確にはわかっていませんが、丸山地区で最初の検地が行われたのは天正18年（1590年）のことです。関ヶ原の戦い後、浅野幸長が紀伊に移封され、慶長6年（1601年）に検地が行われた際には、すでに約2240枚の棚田が存在していたとされています。明治31年（1898年）の測量図を基にした推定では、当時の棚田は約2483枚にまで増加していました。

地理学者の中島峰広は、1974年に「本邦における棚田地域の地理学的研究」という論文を発表し、丸山千枚田の価値を初めて明らかにしました。棚田の経営は、近くの銅鉱山での労働との兼業によって維持されていましたが、1978年の鉱山閉鎖により労働力が流出し、後継者不足と高齢化、さらに減反政策や米価の低迷、機械化の難しさなどが重なり、耕作放棄が進みました。1992年には、棚田の枚数は530枚にまで減少してしまいました。

この由々しき事態に対し、当時の紀和町長は1993年7月7日に座談会を開催し、住民が棚田復興に尽力するならば行政として支援することを表明しました。同年8月20日には「丸山千枚田保存会」が結成され、丸山地区の31戸の住民が加入しました。この活動は農林水産省から2004年度の「立ち上がる農山漁村」（交流分野）に選定されました。1994年には紀和町が日本で初めて千枚田を保存する「紀和町丸山千枚田条例」を制定。2005年に紀和町は熊野市と合併し、条例は「熊野市丸山千枚田条例」として引き継がれました。

棚田オーナー制度

棚田の復元を通じて観光資源としての活用が進みましたが、棚田の保全には多額の費用が必要です。そこで、「日本の原風景を守る活動に賛同し、都市住民との交流を深め、共に千枚田を守ろう」という理念のもと、1996年度からオーナー制度が導入されました。現在は財団法人紀和町ふるさと公社が運営し、千枚田保存会が管理する4.2haのうち約1.6haがオーナー田として活用されています。毎年、全国から100組以上の申し込みがあり、農業体験を通じて都市と農村の交流が図られています。

オーナーの条件

丸山千枚田を愛し、保全活動に理解があり、地域住民をはじめとする地域の人々との交流を大切にできる方。

オーナーの特典

• - 畦塗り体験、田植えの集い、虫おくり、草刈り作業、案山子づくり教室、稲刈りの集い、畦そり体験などの農作業やイベントに参加できます。
• - 作業に参加できない場合でも、保存会が管理するためオーナーになることができます。
• - 千枚田の新米10kgと地域の特産品が11月初旬頃に届けられます。
• - 宿泊施設や温泉入浴の料金割引が適用されます。
• - 機関誌「めはり」が年3回配布されます。
• - ふるさと公社の特産品購入時に割引が適用されます。

年会費

30,000円（丸山千枚田の景観維持と保全に充当されます。）

募集期間

2月中旬から3月31日まで、翌年度のオーナーを募集します。オーナー登録期間は4月1日から翌年3月31日までの1年間です。

丸山千枚田条例

旧紀和町（現熊野市）では、この貴重な資源を後世に継承するため、地元住民とともに保全活動を始めました。1994年には千枚田保護のための条例を制定しました。以下に、熊野市丸山千枚田条例の前文を紹介します。

熊野市丸山千枚田条例前文

「丸山千枚田は、本市を代表する文化的景観であり、市民共有の財産である。その美しい景観と、そこから生まれる豊かな恵みは、先人たちの知恵と努力により、長い年月をかけて形成されてきた。このかけがえのない宝を、将来にわたり継承していくことは、我々の責務である。この条例は、丸山千枚田の保護に関し、基本理念を定め、市、市民、所有者等の責務を明らかにするとともに、必要な事項を定めることにより、その適切な保全を図り、もって豊かな地域文化の発展に寄与することを目的とする。」

条例の構成

1. 前文
2. 第1条 目的
3. 第2条 定義
4. 第3条 市の責務
5. 第4条 市民の責務
6. 第5条 所有者等の責務
7. 第6条 保護区域の指定
8. 第7条 保護区域内における行為の届出等
9. 第8条 助成
10. 第9条 財源措置
11. 第10条 委任
12. 附則

丸山千枚田は、その美しい景観と歴史的価値から、多くの人々に愛されています。この貴重な遺産を未来へと繋げていくために、地域住民だけでなく、オーナー制度を通じて都市住民も一体となって保全活動に取り組んでいます。

参考文献

小倉 眞・小野寺淳・青木幸代（2009）"丸山千枚田の文化的景観とその保存の実態"茨城大学教育学部紀要（人文・社会科学，芸術）.58:33-48.

関連項目

棚田
伊勢路 (熊野古道)
文化的景観
熊野市ふるさと振興公社

外部リンク

丸山千枚田 - 観光三重
* 丸山千枚田 - 一般財団法人熊野市ふるさと振興公社

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