乃木神社 (京都市)

乃木神社

京都市伏見区に鎮座する乃木神社は、「のぎじんじゃ」と読みます。かつての社格は府社でした。明治天皇の御陵である伏見桃山陵のすぐ近く、その麓に位置しています。

ご祭神は、日露戦争における旅順攻略の指揮官として知られる陸軍大将・乃木希典命と、夫に寄り添い、共に最期を遂げた妻である乃木静子命です。

歴史

乃木神社の創建は、大正5年（1916年）9月13日に遡ります。この神社の建立に尽力したのは、薩摩藩（現在の鹿児島県）出身の衆議院議員であり、多くの鉄道会社の設立や経営に関わった実業家、村野山人でした。

村野は、山陽鉄道や京阪電気鉄道など、重要な鉄道会社の立ち上げや役員を務めた人物です。乃木夫妻が明治天皇崩御に際して殉死した時、村野は京阪電気鉄道の代表として、明治天皇の埋葬の儀式に参列していました。この乃木夫妻の殉死に触れ、村野は強い衝撃と深い感銘を受けました。その一年後、村野は全ての公職や役職を辞し、乃木大将の遺徳を顕彰するための神社建立を決意します。周囲からの賛同を得つつも、その建立費用の大部分は村野個人の全財産が充てられました。

このようにして創建された乃木神社は、その後、府社の社格に列せられました。

祭神

本殿に祀られている主祭神は、軍人として国家に尽くし、明治天皇に殉じた乃木希典命と、夫に寄り添い、共に最期を遂げた妻の乃木静子命です。

境内

広大な境内には、神聖な雰囲気に包まれた空間が広がっています。中心となるのは、ご祭神をお祀りする本殿と、参拝者が祈りを捧げる拝殿です。

境内摂社としては、山城ゑびす神社があります。この神社は、当初大正8年（1919年）に静子夫人の御霊を祀る「静魂神社」として創建されました。後に七福神が合祀され、「靜魂七福社」と改称されます。そして、乃木神社創建90周年を迎えた平成18年（2006年）に、静子夫人の御霊を本殿に遷座し、七福神を祭神とする「山城ゑびす神社」として改称されました。さらに、平成27年（2015年）には祭神を恵比須神（恵比寿様）のみとするように改められています。

本殿を取り囲むように整備されている内苑には、乃木大将の優れた書として知られる「乃木三絶」と称される三つの真筆の歌碑が建立されています。

境内には、乃木大将がロシアの将軍ステッセルから贈られた愛馬である白馬「壽号」と、その子馬「璞号」の銅像が建てられ、乃木大将と馬との絆を伝えています。

神社の創建に尽力した村野山人像も境内に静かに佇んでいます。

その他、社務所が設けられており、お守りやお札の授与、御朱印の記帳などが行われています。

乃木大将が幼少期を過ごした山口県長府にあった住まいを復元した長府乃木旧邸も境内に移築されています。

また、日露戦争中、南満州で約一年間、乃木大将が第3軍司令部として使用し、旅順攻略の指揮を執った民家が、創建時に家主から買い上げられ、そのまま移築された記念館として公開されています。この建物の腰石には、現地で使われていた石が用いられており、「漣痕（リップルマーク）」と呼ばれる波の模様のような化石を見ることができます。

隣接する宝物館は、神社創建と同時に建てられた蔵造りの建物です。館内には、乃木大将直筆の書をはじめ、乃木夫妻の生活調度品、武具、奉納品など、百数十点に及ぶ貴重な宝物が展示されており、当時の乃木夫妻の暮らしぶりや人となりを垣間見ることができます。

その他、日露戦争終結後に徳富蘇峰が大阪の一女性の依頼を受けて揮毫した乃木将軍景仰の碑や、日露戦争で活躍した装甲巡洋艦「吾妻」の主錨が慰霊のモニュメントとして移設・安置されています。

小倉右一郎作の乃木希典胸像（乃木将軍胸像）も鎮座しています。

境内には、後藤貞行による愛馬疾走の像、梶佐太郎による七寶焼大花瓶、長谷川榮作による乃木大将・静子夫人木像など、乃木夫妻にゆかりのある様々な芸術作品も奉納されています。

神社の入口を飾る神門は、四脚入母屋平入りの重厚な木造銅板葺の門です。この門は、台湾の阿里山で採れた良質な台湾檜（タイワンヒノキ）を用いて建てられています。

現地情報

所在地: 京都府京都市伏見区桃山町板倉周防32-2

「板倉周防」という地名は、かつて桃山地域に伏見城があった時代に、この地に板倉周防守の屋敷があったことに由来するとされています。

交通アクセス:

鉄道を利用する場合、JR奈良線「桃山駅」からは徒歩約10分です。
近鉄京都線「桃山御陵前駅」、京阪本線「伏見桃山駅」からは、それぞれ徒歩約20分程度となります。
* バスを利用する場合は、京阪バス「京都橘高校停留所」が最寄りのバス停となります。

もう一度検索