久松保夫

久松保夫の生涯と影響

久松保夫（ひさまつやすお）は、日本の演劇と声優界において長い歴史を持つ重要な人物です。本名は高橋寛で、1919年6月6日に東京府日本橋区に生まれました。彼の芸名の由来は、この出身地に因んでいます。久松は江戸っ子として育ちましたが、幼少期に両親を失い、一人での生活を余儀なくされました。

彼は東京府立第六中学校を経て、のちに青山学院大学の神学部に入学しました。牧師を目指すも、戦争に対する宗教界の無力さに失望し、演劇へと進む道を選びました。1938年に新築地劇団に入り、徐々に舞台での活動を始めます。

1940年には東京宝塚劇場に入社し、そこでスピードと反射神経を生かしたアドリブ演技に磨きをかけました。1949年に東宝劇団を退団後はフリーで 数々の劇団を渡り歩き、1955年には注目を集めることになります。それは、テレビドラマ『日真名氏飛び出す』の主演を務めたことで、視聴率49.5%を記録し、彼は一躍人気者となりました。この作品はドラマでのテレビスター第一号の称号を得るきっかけともなったのです。

しかし、彼の知名度が上がるにつれて、特定のキャラクターに固定されてしまい、以降の主役の機会が減少しました。1950年代後半からは声優業へも転向し、『ララミー牧場』のジェス・ハーパーや『スタートレック』のスポックなど、多くのキャラクターを演じました。

また、久松は1959年に太平洋テレビジョンの取締役に就任し、芸能部門でも影響力を持ちました。さらに、こけしなどの伝統玩具の収集や執筆活動にも熱心でした。彼は1974年に「こけしの会」を設立し、伝統文化の保護と普及に貢献しています。

また、1969年には日本初の声優専門芸能事務所、青二プロダクションの設立に関わり、後進の育成や権利保護の活動にも力を入れました。彼は初代青二塾塾長を務め、多くの声優を育て上げました。

しかし、1980年代に入ると健康が悪化し、入退院を繰り返すようになりました。1982年には心臓発作と呼吸不全を併発し、6月15日に63歳でこの世を去りました。生前には多くの作品に出演しており、特に声優としての技術は高く評価されていました。彼の死後、持ち役の引き継ぎや代役を務める者が現れ、その名を今でも多くの人々が覚えています。

久松保夫の功績は、演劇や声優業界における多様な才能を開花させたことにあります。彼の影響は今もなお後輩たちに受け継がれ、演技や声の世界で新たな道を切り開いていくことでしょう。

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