久留正道

久留正道：明治期を彩った建築家の軌跡

久留正道（くるまさみち、1855年4月18日 - 1914年4月17日）は、日本の建築家であり、明治時代に文部省営繕の建築技師として、数々の重要な建築物を手掛けました。彼の業績は、日本の近代建築史において重要な位置を占めています。

生涯と業績

久留正道は江戸に生まれ、工部大学校（現在の東京大学工学部建築学科）でジョサイア・コンドルの指導を受けました。1881年に工部大学校を卒業後、工部省に奉職し、技手などを経て、1886年に文部省に入省。1887年には文部省技師となり、各地の高等中学校の建築に従事しました。山口半六と共に、第一から第五までの高等中学校や音楽学校など、多くの官立学校の建築を担当し、日本の教育施設の近代化に大きく貢献しました。

1891年には東京工業学校（現東京工業大学）および東京美術学校（現東京芸術大学）で嘱託として教鞭を執り、後進の育成にも尽力しました。1892年に文部省に復帰し、会計課建築掛長として、初等・中等教育施設の行政指導や国直轄学校の創立工事に携わるなど、幅広い分野で活躍しました。

宮本雅明の著書によると、明治後期に学校建築の基本として利用された『学校建築図説明及設計大要』（明治28年刊）を著したのは久留正道であると考えられています。これは、当時の学校建築における設計思想や技術水準を知る上で貴重な資料となっています。

代表作品

久留正道の代表的な作品としては、以下のようなものが挙げられます。

京都大学吉田寮（1889年、京都市）：山口半六との共同設計。
京都大学・学生部留学課留学生センター（1889年、京都市）：旧第三高等中学校・物理学実験場、山口半六との共同設計。
京都大学・本部構内正門（1893年、京都市）：旧・第三高等中学校正門、山口半六との共同設計。
旧東京音楽学校奏楽堂（1890年、東京都台東区）：山口半六との共同設計。重要文化財。
大阪市立愛珠幼稚園（1901年、大阪市中央区）：伏見柳、中村竹松との共同設計。重要文化財。
学習院大学史料館（1909年、東京都豊島区）：登録有形文化財。
学習院大学乃木館（1911年、東京都豊島区）、北別館（1912年、東京都豊島区）。
四天王寺八角亭（1903年、大阪市天王寺区）：旧内国勧業博覧会小奏楽堂。
国際子ども図書館（1906年、東京都台東区）：旧帝国図書館。東京都選定歴史的建造物。
旧第四高等中学校本館（1890年、金沢市）：現・四高記念文化交流館。山口半六との共同設計。重要文化財。
第四高等学校物理化学教室（1890年）：現在は明治村に移築。山口半六との共同設計。化学遺産、登録有形文化財。
旧第五高等中学校本館（1889年、熊本市）：現・熊本大学五高記念館。山口半六との共同設計。重要文化財。
旧第五高等学校化学実験場：山口半六との共同設計。重要文化財。
シカゴ万国博覧会鳳凰殿（1893年、シカゴ）：近代和風建築。
石川県立歴史博物館：旧金沢陸軍兵器支廠（第5号兵器庫・第6号兵器庫・第7号兵器庫）。重要文化財。
セントルイス博覧会パビリオン（1904年、セントルイス）。
京都府庁舎設計調査・工事監理（1904年、京都市）：設計は松室重光・一井九平。
琴平金毘羅宮宝物館（1905年、香川県仲多度郡琴平町）：石原錠太郎、赤堀徳次郎らと共同設計。登録有形文化財。

これらの建築物は、当時の建築技術やデザインの粋を集めたものであり、現在も多くの人々によって保存・活用されています。

久留正道の遺産

久留正道は、日本の近代建築の黎明期において、教育施設の設計を中心に多大な貢献をしました。彼の設計した建築物は、機能性と美しさを兼ね備え、後の世代の建築家たちに大きな影響を与えました。彼の遺した建築物は、今もなお、日本の文化遺産として大切にされています。

彼の業績は、日本の建築史に深く刻まれ、後世に語り継がれていくことでしょう。

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