久留里

千葉県君津市久留里：歴史と自然が織りなす魅力的な町

久留里は、千葉県君津市に位置する、歴史と自然豊かな町です。房総半島の中央部、小櫃川の中流域に広がる久留里は、江戸時代には久留里藩の城下町として栄え、近世の面影を色濃く残す一方、近年では良質な地下水に恵まれた「名水の里」としても知られています。2008年には環境省の平成の名水百選にも選ばれ、その豊かな自然環境が広く認められています。

久留里城と城下町の変遷

久留里のシンボル的存在である久留里城は、丘陵地帯に築かれた山城です。本丸、二の丸、そして山麓に位置する三の丸から構成され、その構造は城下町の形成にも大きな影響を与えました。江戸時代中期に入封した黒田直純は、日常の行政機能を山麓の三の丸に集約し、藩の支配の中枢として活用しました。城下町は、久留里城の北側に広がり、商業が盛んに行われ活気に満ちていました。一方、三の丸や城の周囲には侍屋敷が配置されていましたが、これらは現在の久留里地籍には含まれず、近隣の浦田地籍に属していたという歴史的な経緯があります。久留里城には「雨城」や「霧降城」という別名があり、その名の通り、清澄山系からの豊富な雨水に恵まれ、地下水の量も豊富でした。この地下水は、江戸時代末期から明治初期にかけて発展した上総掘りの技術によって汲み上げられ、酒造業などの産業を支えました。現在もその水は「名水の里」として観光資源として活用されています。また、久留里藩士の内職として始まったという「雨城楊枝」は、クロモジという地元産の材料で作られ、千葉県の伝統的工芸品に指定されています。

交通の要衝としての久留里市場

久留里市場は、久留里街道（国道410号）沿いに発展した商業の中心地です。上町、仲町、下町、そして新町といった地区から構成され、複数の街道が交わる交通の要衝として機能していました。久留里街道以外にも、大多喜方面への街道、木更津からの街道、さらには鹿野山や清澄山を経由する街道など、様々なルートが久留里市場に集まりました。仲町付近では小櫃川に河岸が設けられ、木更津港と舟運で結ばれ、秋から春にかけては物資の輸送に利用されました。廃藩後も小櫃川流域の商業中心地として発展を続け、明治中期から昭和初期にかけては「三八の市」と呼ばれる定期市が開かれ、賑わいをみせていました。現在も久留里街道沿いに商店街が残り、地域の経済の中心を担っています。久留里銀行（現千葉銀行久留里支店）も地元資本によって設立されるなど、久留里市場は地域の経済発展に大きく貢献しました。

久留里の歴史

久留里の歴史は古く、古代には上総国望陀郡に属していました。地名の「久留里」は戦国時代から見られるようになったとされています。室町時代中期には上総武田氏の武田信長によって久留里城が築かれ、その後里見氏の支配下に置かれました。里見氏は久留里城を北条氏との最前線として防衛拠点として利用していました。豊臣秀吉の小田原征伐後、久留里城は徳川氏の支配下に置かれ、大須賀忠政、土屋忠直といった武将が城主となりました。その後、廃藩置県を経て、現在の君津市の一部となりました。

久留里の現在

現在、久留里は豊かな自然と歴史的建造物を活かした観光地として発展しています。久留里城址資料館では、久留里城の歴史や文化について学ぶことができます。また、名水百選にも選ばれた地下水は、地域住民や観光客に親しまれています。交通面では、JR久留里線久留里駅が最寄り駅で、バス路線も整備されているため、アクセスも良好です。

久留里は、歴史と自然が調和した、魅力あふれる町です。その豊かな歴史と自然に触れ、ゆったりとした時間を過ごしたい方におすすめです。

もう一度検索