武田信長

武田信長の生涯

武田信長は、室町時代中期の武将であり、甲斐の有力な国人領主でした。甲斐守護・武田信満の次男として生まれ、兄に武田信重、甥に武田信元がいます。通称は悪八郎、豊三と称しました。子には伊豆千代丸（信高？）、信武、信房、里見義実室などがいます。上総武田氏の祖として知られています。

甲斐での争乱

信長の時代、甲斐は守護武田氏の支配下にありましたが、応永23年（1416年）の上杉禅秀の乱で父・信満が戦死。甲斐は無主状態となり、逸見氏、穴山氏、跡部氏などの有力国人勢力が台頭し、国内は争乱状態に陥りました。この混乱の中、信長は父に従い禅秀の乱に参加。乱後、甲斐国内で逸見氏らと対立しました。逸見氏の勢力は甲府盆地北縁から西郡地域に広がっていたとされ、信長は郡内の加藤氏と協力してこれに対抗しました。

鎌倉府との対立

信長は、鎌倉府から三度にわたる征討を受けました。応永28年（1421年）には、吉見伊予守が派遣され、信長の「反逆」を問い詰めましたが、無実が確認され帰還しました。また、幕府は信元を支援するため、信濃守護・小笠原氏を通じて跡部氏を甲斐守護代に任命しました。しかし、信長と伊豆千代丸の政権は幕府の承認を得ておらず、跡部氏とも対立しました。

守護任命と更なる戦い

応永30年（1423年）には、信長の兄である信重が守護に任命されました。しかし、逸見氏や穴山氏らの国人勢力はこれに抵抗し、信長もこの抗争に関わったと考えられています。応永32年（1425年）には上杉房前が、翌年には一色持家率いる軍勢が甲斐に派遣され、信長は郡内猿橋で防戦しましたが、武蔵国の白旗一揆が持氏方に加担したことで敗北。田原でも敗れ、降伏して鎌倉府に出府しました。

甲斐を離れ、上総へ

永享5年（1433年）には鎌倉を出奔し、甲斐に戻った信長。同年4月29日には荒川で日一揆を味方につけた跡部氏と戦いますが敗れ、駿河へ逃れました。その後、6代将軍・足利義教に仕え、結城合戦で武功を挙げ、相模西部に所領を得たとされています。嘉吉2年（1442年）頃には同国の守護に補任されたという説もありますが、義教が暗殺された後、守護職を上杉氏に奪われたと見られています。一方、甲斐本国では兄・信重が守護として復権していました。

上総での活躍と最期

甲斐を離れた信長は、古河公方・足利成氏に仕えました。康正2年（1456年）頃、成氏の命を受け、上杉氏が守護を務める上総に兵を進め同国を接収。長禄2年（1458年）頃に庁南城、真里谷城を築いたとされています。しかし、近年では、信長時代の武田氏の本拠を造海城とし、庁南・真里谷への進出を真里谷清嗣以降のものとする新説も出ています。信長は文明9年（1477年）頃、上総にて死去しました。享年は80前後（一説には77）とされています。

子孫の繁栄

信長の子孫は成氏に仕え、上総国で勢力を拡大し、戦国時代には真里谷氏として関東において戦国大名化しました。

まとめ

武田信長は、甲斐の国人領主として生まれ、激動の室町時代を生き抜いた武将です。守護武田氏の一族でありながら、国内の争乱、鎌倉府や幕府との対立、上総での勢力拡大など、波乱に満ちた生涯を送りました。その子孫は上総で繁栄し、戦国大名へと発展しました。信長の生涯は、当時の武士たちの生き様を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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