久留里城

久留里城：上総の地に刻まれた歴史の層

久留里城は、千葉県君津市久留里地区に位置する、歴史深い山城です。雨城、霧降城、浦田城といった様々な別名を持ち、室町時代から明治維新まで、その姿を変えながらも、長く地域社会を見守ってきました。その歴史は、複雑で興味深い物語を織りなしています。

建城から戦国時代へ：上総武田氏と里見氏の覇権争い

久留里城の起源は、室町時代の康正2年（1456年）に遡ります。上総武田氏の祖、武田信長によって築かれた山城（古久留里城）が、その始まりです。その後、武田信長の血を引く真里谷氏が城を支配しました。しかし、戦国時代に入ると、真里谷氏の勢力は衰え始め、代わって里見氏が久留里城を掌握します。里見氏によって大規模な改修が行われ、新久留里城として生まれ変わったのです。佐貫城とともに、北条氏に対抗する最前線基地としての役割を担いました。この時代、幾度となく戦火にさらされ、城の構造や規模も変化を遂げました。天文4年（1535年）には、里見義堯が久留里を拠点とし、古久留里城の下に新たな城郭を築いたとされています。しかし、この築城時期については諸説あります。永禄7年（1564年）には北条氏の侵攻を受け一時陥落しましたが、里見氏は奪還し、その後も重要な拠点として機能し続けました。

江戸時代：久留里藩の城として

天正18年（1590年）、豊臣秀吉の小田原征伐により、里見氏は上総の所領を失います。その後、徳川家康の関東入封に伴い、久留里城には松平忠政（大須賀氏）が3万石で入城しました。忠政は城下町の整備にも尽力し、後の久留里藩の基礎を築きました。慶長6年（1601年）、関ヶ原の戦いの功績により、忠政は加増の上、遠江国横須賀城へ転封。久留里城には土屋忠直が入城しますが、延宝7年（1679年）に改易され、一時廃城となりました。寛保2年（1742年）、黒田直純が3万石で入城し、久留里藩が再興。黒田氏は明治維新まで久留里城を居城とし続けました。明治5年（1872年）の廃城令によって、久留里城の歴史に幕が閉じられました。

城郭の構造と遺構

久留里城は、本丸を中心とする近世城郭部に加え、安住原地区、怒田遺跡、山麓小櫃川河畔の近世居館部など、複数の郭群から構成されていました。江戸時代には、近世城郭部と近世居館部が主要な城域でしたが、安住原地区は真里谷氏時代の遺構で、里見氏時代には既に放棄されていた可能性が高いとされています。しかし、里見氏時代にも使用されていたとする説もあります。山麓の近世居館部は開発によって多くが失われましたが、山上の遺構は比較的良好に残っています。天守台などの近世遺構に加え、堀切や削り残し土塁など、中世里見氏時代の遺構も見られます。山上には豊富な湧水があり、男井戸、女井戸、お玉が池などの水源が現在も残っています。これらの遺構は、久留里城の歴史を物語る貴重な証です。

雨城の異名と近年の整備

久留里城は、その地名の由来にもなったように、雨の多い地域に位置することから「雨城」の異名を持っています。昭和30年（1955年）には、城跡地が城山公園として整備され、昭和54年（1979年）には模擬天守閣が建設されました。この模擬天守閣は、浜松城をモデルにした2層3階建てですが、実際には2層2階建てであったと推定されています。現在、模擬天守閣内は展望台として利用され、全国の天守閣のパネル展示などが行われています。

久留里城は、その長い歴史と、幾多の変遷を経てきた姿が、今もなお人々に語りかけています。城跡を訪れれば、歴史の重みと、自然の豊かさを同時に感じることができるでしょう。

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