察度

察度（さっと）

察度（1321年 - 1395年）は、琉球王国、三山時代の中山（ちゅうざん）の初代国王です。現在の宜野湾市出身とされ、同市の偉人の一人として知られています。神号は大真物（うふまもの）。

生涯

伝承によれば、察度は浦添間切謝名の奥間大親と天女の間に生まれたとされています。幼少期は非常に貧しい生活を送っていましたが、当時勢力のあった勝連按司の娘を娶ったことで、運が開けました。

当時の琉球は、中山、南山、北山の三つの勢力が対立していました。察度は牧港で日本の商船から鉄塊を買い取り、農民に農具を分け与えたことで、浦添按司として人望を集めます。

英祖王統の西威（せいい）王が崩御すると、その人望の厚さから1350年に中山王に推挙されました。即位後、南北の山に対抗するため、経済基盤を固めるべく大改革を断行。貿易館や公倉としての役割を担う御物城（うむものぐすく）を設置し、ルソン、ジャワ、スマトラなど東南アジア諸国や、明、高麗との貿易を開始しました。

1372年、明の洪武帝が楊載（ようさい）を使者として派遣し、察度に朝貢を促しました。これに応じ、弟の泰期（たいき）を朝貢使として派遣し、明に臣下の礼を取りました。これにより、明との交流が始まりましたが、北山と南山も明に使節を派遣し、それぞれ中山・山南・山北の王として冊封を受けることとなりました。これにより、英祖王統の残党勢力である読谷山按司や、山北王国、山南王国との間で争いが絶えなかった琉球は、冊封体制下での三山時代を迎えることになります。

朝鮮半島の『高麗史』や『李朝実録』によれば、1389年に察度王は玉之（ぎょくし）を使者として高麗に通交を求め、高麗に代わった李氏朝鮮へも1392年から使者を送っています。この際、倭寇に捕らえられた朝鮮人を本国に送還するとともに、硫黄、材木、胡椒、ベッコウなどを献上したと記録されています。また1394年には、朝鮮へ逃亡したとされる山南王の王子、承察度（しょうさっと）の送還を求めたことも知られています。

同時期には、宮古・八重山からの入貢も行われるようになりました。1390年には、宮古の与那覇勢頭豊見親（よなはせどとゆみゃ）が島内統一の後ろ盾を期待して入貢しています。

また、察度の治世には、北元の3代皇帝トグス・テムルの次男であるディボヌが、明の洪武帝によって琉球に配流されたことが『明史』や『球陽記事』に記されています（ディボヌのその後については不明です）。

系譜

父：奥間大親
母：天女（伝説）
姉：名前不伝
弟：泰期（小禄城主、後に天願按司）
弟：天久按司
弟：安谷屋思加那志
妃：眞鍋樽（勝連按司二世の娘）
世子：武寧
次男：崎山子（崎山里主）
長女：天茶添按司加那志

子孫からは京阿波根實基(虞氏)、名護親方程順則(實基の子孫)が出ています。

参考文献

伊波普猷『沖縄よ何処へ』 1928年
岡本弘道『琉球王国海上交渉史研究』榕樹書林、2010
吉成直樹、高梨修、池田栄史『琉球史を問い直す 古琉球時代論』、森話社、2015
上里隆史『海の王国・琉球 海域アジア大交易時代の実像』ボーダーインク、2018

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