久米島紬

久米島紬（くめじまつむぎ）

久米島紬は、沖縄県島尻郡久米島町で織られる絹織物で、紬の一種です。2004年（平成16年）に、その製作技術が国の重要無形文化財に指定されました。

特徴

久米島紬の特徴は、琉球王国時代から受け継がれてきた伝統的な製法にあります。模様の選定から、染め（草木染めと泥染め）、織りの工程を手作業で行うのが基本です（一部工程は分業）。

原料となる糸の一部は、島内の養蚕農家で生産されたものを使用。染料は、島に自生するサルトリイバラ（方言名：グール）などの植物を使用し、泥染めも島内で行われます。これらの自然素材を用いることで、独特の色合いと風合いが生まれます。

基本の色合いは、黒い光沢を帯びたものですが、若草色や黄色などの色物も存在します。かつては様々な色や柄が存在しましたが、時代とともに黒や茶色を基調としたものが主流となり、それが久米島紬の本来の姿として認識されるようになりました。

歴史

久米島紬の起源は、14世紀末頃の沖縄県の三山時代に遡ります。久米島の「堂の比屋（堂集落の長）」が明に渡り、養蚕などの技術を学んだことが始まりとされています。

1511年、久米島は琉球王国の侵攻を受け、その支配下に入ります。以来、税の7割を紬で納めることが義務付けられました。1609年には、琉球王国が薩摩藩の侵攻を受け服属。久米島にも重い税が課せられるようになります。

1619年、当時の琉球国王・尚豊王は、久米島紬の技術革新を図るため、越前から坂元普基を招き、養蚕や真綿の製法を伝授させました。また、薩摩からは友寄景友が来島し、織り方と染色の技術を伝え、久米島紬は飛躍的な発展を遂げました。

江戸時代には、久米島紬は「琉球紬」として日本本土で流通しました。1735年の記録によると、生産される紬の大部分である799反が税として納められており、15歳から45歳までの女性に人頭税として課せられました。この過酷な税制は、1903年（明治36年）に廃止されるまで島民を苦しめました。

1905年（明治38年）頃から、紬の生産を奨励するための改良事業が始まり、1907年（明治40年）には両村組合立女子工業徒弟学校が設立されました。これにより、久米島紬は最盛期を迎えます。1909年（明治42年）に最初の卒業生が輩出されてから、生産量は年々増加。旧税制廃止前の1590反に対し、1910年（明治43年）には6000反、1916年（大正5年）には久米島紬織物協同組合が設立され、島全体で増産に取り組みました。1923年（大正12年）には、生産量が42129反に達しました。これは、地元の生産意欲と第一次世界大戦による好景気が重なった結果であり、島外では類似品が出回るほど売れました。しかし、大戦後の世界恐慌の影響を受け、生産量は徐々に低迷し、組合も解散しました。昭和初期には10000反前後となり、1937年（昭和12年）頃には2000反強まで落ち込み、一部の集落でのみ生産されるようになりました。

第二次世界大戦が始まると、久米島も戦時体制の影響を受け、原料の供給が滞り、生産が途絶えがちとなりました。

戦後は、養蚕を行う人が現れ、原料の島内供給が確保されるようになり、紬を生産する集落も増え、徐々に復興が進められました。1951年（昭和26年）には、紬の生産販売に関する協議会が開催され、島内では共同養蚕室の建設や講習会などが頻繁に行われました。1955年（昭和30年）には久米島紬復興期成会が結成され、1956年（昭和31年）には販売を目的とした仲里村久米島紬工業組合が、1970年（昭和45年）には仲里村久米島紬事業協同組合が結成されました。これらの組合は、1977年（昭和52年）に久米島紬事業協同組合として統合され、久米島紬の振興のために様々な活動を行っています。

無形文化財

2004年（平成16年）、久米島紬の伝承された製作技術が国の重要無形文化財に指定され、久米島紬保持団体（技術の保存と伝承者の養成を行う団体）が重要無形文化財保持団体に認定されました。

関連項目

紬
琉球紬
米沢紬
大島紬
農畜産業振興機構

外部リンク

久米島紬事業協同組合
久米島町
独立行政法人農畜産業振興機構

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