久米権九郎

久米権九郎：日本の建築を支えた巨匠

久米権九郎（くめ ごんくろう、1895年12月1日 - 1965年7月14日）は、日本の建築家であり、久米設計（旧久米建築事務所）の創立者として知られています。彼は、皇居関連の橋梁建設や佐世保鎮守府軍港といった国家的なプロジェクトを手がけた久米民之助の次男として生まれました。彼の家系は芸術や実業の世界で著名な人物を輩出しており、洋画家の久米民十郎や日本火災海上保険創業者の久米平八郎らがいます。また、東急電鉄創業者の五島慶太は義兄、五島昇は甥にあたります。

生涯と業績

久米権九郎は東京で生まれ、1914年に学習院中等科を卒業後、1923年にドイツへ留学し、南独家具製造会社での実務経験を経て、シュトゥットガルト州立工科大学で建築を学びました。在学中にはロンドンの建築学校にも通い、1929年に帰国しました。

帰国後、久米は日本の木造建築と西洋の合理性を融合させた「久米式耐震木工構造」を開発し、ドイツ工学博士号を取得しました。その後、友人の渡辺仁とともに渡辺久米建築事務所を開設し、1932年に独立して久米建築事務所を設立しました。

戦前は主に中国で設計活動を行い、中華民国海関総建築師も兼任しました。戦後は、戦災復興院および住宅営団の後援により住宅供給会社を設立し、公営アパートや団地計画に貢献しました。また、財団法人日本盲導犬協会の初代理事長も務めました。

主な作品

久米権九郎は、数多くの建築物を設計しました。以下に代表的な作品を挙げます。

城山荘（三井大磯別邸）：1934年竣工。三井財閥の別邸。
日光金谷ホテル：現存。17回BELCA賞を受賞。
金谷ホテル別館
新舞子水族館
万平ホテル
三井上高井戸運動場クラブハウス
富士製鉄：1950年。
座間チャペル：1952年。
室蘭市庁舎
岡ビル百貨店

これらの作品は、彼の建築家としての多才さを示しています。特に、日本の伝統的な建築様式と西洋のモダニズムを融合させたデザインは、多くの人々に感銘を与えました。

久米権九郎の精神

久米権九郎は、建築を通じて社会に貢献することを常に考えていました。戦後の住宅不足を解消するために住宅供給会社を設立したり、視覚障碍者のために盲導犬協会の理事長を務めたりしたことは、彼の社会貢献に対する強い意志の表れと言えるでしょう。彼の建築に対する情熱と社会貢献の精神は、今日の建築家にも大きな影響を与えています。

1965年7月14日、久米権九郎は70歳で生涯を閉じました。彼の遺した数々の建築物は、今もなお多くの人々に愛され、日本の建築史にその名を刻んでいます。

参考文献

建築・経験とモラル（網戸武夫、1999年、住まいの図書館出版局）
久米権九郎追憶誌（久米権九郎追憶詩編集委員会、1966年、久米建築事務所）
久米設計/別冊新建築/日本現代建築家シリーズ18」出版社名：新建築社：1997年
建築文化1990年6月号：近代日本建築家の足跡「久米権九郎」彰国社

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