乙屈利失乙毘可汗

乙屈利失乙毘可汗（El külüg šad irbis qaγan）

乙屈利失乙毘可汗（? - 640年）は、7世紀に西突厥を統治した可汗の一人です。彼の可汗号は乙屈利失乙毘可汗であり、阿史那氏を姓としていましたが、個人名は記録に残っていません。『旧唐書』では、莫賀咄乙毘可汗（バガテュル・イルビ・カガン）として言及されています。

生涯

639年、彼の父である沙鉢羅咥利失可汗の配下であった吐屯俟利発が、乙毘咄陸可汗と密通して反乱を起こしました。沙鉢羅咥利失可汗は抜汗那（フェルガナ）に逃れましたが、その地で亡くなりました。その後、国の人々は彼の息子、つまり乙屈利失乙毘可汗を立てて可汗としました。

しかし、乙屈利失乙毘可汗も長くは続かず、翌年の640年に死去しました。彼の死後、西突厥では新たな可汗を擁立する動きが起こりました。弩失畢部の酋帥たちは、沙鉢羅咥利失可汗の弟である伽那設の子、薄布特勤（バガテュル・ヤブグ）を迎え入れ、乙毘沙鉢羅葉護可汗として新たな支配者としました。

子

乙毘射匱可汗

参考文献

『旧唐書』（列伝第百四十四下 突厥下）
『新唐書』（列伝百四十下 西突厥）
佐口透・山田信夫・護雅夫訳注『騎馬民族誌２正史北狄伝』（1972年、平凡社）
* 内藤みどり『西突厥史の研究』（1988年、早稲田大学出版部、ISBN 4657882155）

乙屈利失乙毘可汗は、西突厥の歴史において短期間ながらも重要な役割を果たした人物です。彼の治世は短く、記録も限られていますが、彼の死がその後の西突厥の政治変動の引き金となったことは注目に値します。特に、乙毘沙鉢羅葉護可汗の擁立は、西突厥内部の勢力バランスに大きな変化をもたらしました。

彼の生涯については、史料が限られているため不明な点が多いですが、『旧唐書』や『新唐書』といった中国の史書に記録が残されており、西突厥史研究において重要な情報源となっています。内藤みどりの『西突厥史の研究』などの専門的な研究書も、彼の時代背景や政治状況を理解する上で役立ちます。

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