九州労災病院

福岡県北九州市小倉南区に所在する「独立行政法人労働者健康安全機構九州労災病院」は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する医療機関です。その歴史は古く、日本で初めて開設された労災病院として知られています。現在の建物・所在地には、2011年（平成23年）5月1日に旧北九州空港の跡地へ移転・新築されて以降、地域医療の中核的な役割を担っています。

沿革

九州労災病院は、1949年（昭和24年）2月17日、当時の労働省によって日本初の労災病院として開設されました。同年10月からは財団法人労災協会に運営が委託され、その後、労働福祉事業団の発足に伴い運営主体が移管されました。病院の規模や機能は徐々に拡充され、1957年（昭和32年）7月1日には前身の九州労災病院門司分院が門司労災病院（現在の九州労災病院門司メディカルセンター）として独立開院しました。1977年（昭和52年）12月21日には産業医科大学の関連教育病院となり、教育機関としての側面も持つようになります。

2004年（平成16年）4月1日には、国の機関改革に伴い独立行政法人へと移行。病院施設の老朽化や機能強化の必要性から、2007年（平成19年）4月には旧北九州空港跡地の一部約5ヘクタールの敷地で移転新築工事が始まりました。新病院の開院に先立ち、2009年（平成21年）4月1日には地域医療支援病院の承認を取得。そして、2011年（平成23年）5月1日に現在地である北九州市小倉南区葛原高松へ移転し、新病院での診療が開始されました。移転後も医療機能の強化は続き、2016年（平成28年）4月1日には災害拠点病院および福岡県DMAT指定医療機関に、2020年（令和2年）4月1日には地域がん診療連携拠点病院にそれぞれ指定されています。

医療体制と機能

九州労災病院は多岐にわたる診療科を設置し、幅広い疾患に対応しています。主要な診療科には、内科、消化器内科、循環器内科、脳神経内科、精神科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科・形成外科、泌尿器科、消化器外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、麻酔科、歯科口腔外科などがあります。特に、リハビリテーション科は総面積約1,400平方メートルの広大なリハビリセンターを備え、勤労者のリハビリテーションに力を入れています。また、整形外科は2017年度に2,474件、眼科は2016年度に765件の手術を実施するなど、専門分野での実績も豊富です。

「勤労者メンタルヘルスセンター」を設置するなど、働く人々の心身の健康維持・増進に特化した取り組みも病院の大きな特徴の一つです。ここでは、労働者の不調に関する相談応対に加え、職場におけるメンタルヘルス研修や体制整備に関する助言なども行われています。

地域医療における重要な役割を担う病院として、様々な公的な認定を受けています。前述の通り、災害発生時に中核的な医療救護活動を行う「災害拠点病院」や「福岡県DMAT指定医療機関」、地域のがん診療連携を推進する「地域がん診療連携拠点病院」、地域の医療機関を支援する「地域医療支援病院」に指定されています。さらに、医療の質や安全性が一定水準を満たしていることを示す「公益財団法人日本医療機能評価機構認定病院」でもあり、2019年7月12日には3rdG:Ver.2.0の認定（2回目）を受けています（この認定は2023年10月31日まで有効でした）。これらの指定・認定に加え、各種法令に基づく指定や各学会の認定施設としての機能も有しています。

交通アクセス

公共交通機関でのアクセスは、JR日豊本線「下曽根駅」北口から徒歩約10分です。また、西鉄バスの利用も便利で、「青葉車庫」発や「行橋営業所」発の路線バス（路線番号18, 19）が「下曽根駅北口」を経由し、「九州労災病院」停留所に停車します。

医療事故に関する情報

本病院においては、医療事故の発生が報道されています。2014年に、不正出血で受診した50歳代の女性に対し、悪性腫瘍の検査目的で行われた細胞診検査において、検体取り違えが発生しました。本来は疑陽性を示すべきであった女性の検体が陰性と誤って診断された結果、癌の発見が遅れたとされています。女性はその後、別の医療機関で陽性と判明し、再び九州労災病院で検査を受けた際には癌が進行した状態であり、別の病院で手術を受けたものの、2017年 4月に亡くなりました。この件に関して、遺族が検体取り違えが死因に繋がったとして、病院を相手取って福岡地方裁判所小倉支部に訴訟を提起しています。

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