九月の雨

九月の雨

「九月の雨」（くがつのあめ）は、1977年9月21日に発表された、シンガーソングライター太田裕美さんの通算9枚目となるシングル楽曲です。作詞は松本隆さん、作曲およびA面曲の編曲は筒美京平さんが手がけました。日本のポップス界を代表する両氏のコンビネーションによる、太田裕美さんのキャリアを語る上で欠かせない一曲となっています。

ヒットと評価

本楽曲は、太田裕美さんのディスコグラフィにおいて、「木綿のハンカチーフ」「赤いハイヒール」に続く3番目のヒット曲として広く認知されています。発売後、オリコンチャートの週間ランキングでトップ10入りを果たしました。これは、1977年1月にリリースされた「しあわせ未満」以来、2作ぶり5作目となるトップ10入りでした。しかしながら、特筆すべきはその後の記録です。現在（2023年時点）に至るまで、この「九月の雨」が太田裕美さんのシングルとしては、オリコンチャートで最後に週間トップ10入りを記録した楽曲となっています。

楽曲背景と特徴

「九月の雨」は、先行して発表されていたオリジナルアルバム『こけてぃっしゅ』からのシングルカットとしてリリースされました。ただし、シングル盤に収録されたバージョンは、アルバム収録テイクと比較して、一部ミキシングに変更が加えられています。これは、シングルとしてより多くのリスナーにアピールするための調整であったと考えられます。また、太田裕美さん自身がライブやテレビ番組などでこの曲を披露する際には、オリジナルキーよりもキーを下げて歌唱することが多いようです。これは、年月を経て声域や表現方法の変化に合わせるため、あるいは楽曲の持つ雰囲気をより深く表現するためなど、様々な意図が考えられます。

メディアでの披露

楽曲のヒットを受け、太田裕美さんは同年末の『第28回NHK紅白歌合戦』に2回目の出場を果たし、本楽曲を披露しました。この時のパフォーマンスは、日本の歌謡史においてしばしば語り草となっています。太田さんの歌唱中、当時の人気アイドルグループであるキャンディーズをはじめ、山口百恵さん、しばたはつみさん、桜田淳子さんといった豪華な顔ぶれの歌手たちが、傘を差しながらバックダンサーとして共演したのです。雨の情景を描いた楽曲の世界観を、ステージ演出として具現化した印象的なパフォーマンスでした。

収録曲構成

シングル盤には、A面とB面に以下の2曲が収録されています。

A面：九月の雨 (4分20秒)
作詞: 松本隆
作曲・編曲: 筒美京平

B面：マニキュアの小壜 (3分51秒)
作詞: 松本隆
作曲: 筒美京平
編曲: 萩田光雄

B面の「マニキュアの小壜」も、作詞松本隆、作曲筒美京平というゴールデンコンビによる作品であり、編曲は萩田光雄さんが担当しています。シングルとして両面ともクオリティの高い楽曲が揃っているのが特徴です。

カバーバージョン

「九月の雨」は、その楽曲の良さから多くのアーティストによってカバーされています。

石川ひとみ (1978年): カセットミュージックテープ『くるみ割り人形・右向け右 =わたしはひ・と・み=』に収録されました。後に2002年発売のCD-BOX『78-86ぼくらのベスト 石川ひとみCD-BOX』にも再録され、デジタル音源として聴くことが可能となりました。
ReeSya (2013年): アルバム『君とぼくのラジオ』に収録されています。

これらのカバーバージョンは、オリジナルとはまた違った魅力で楽曲の世界観を表現しています。

関連作品への収録

「九月の雨」は、単なるシングル曲としてだけでなく、様々な企画アルバムやコンピレーション盤にも収録され、後世に伝えられています。

秋歌: 秋をテーマにした楽曲を集めたコンピレーション・アルバムに収録されています。
* 風街図鑑: 松本隆氏の作詞家活動30周年を記念して制作されたCD-BOXにも収録されています。

これらの収録は、本楽曲が日本のポップス史における「秋の名曲」の一つとして、また作詞家・松本隆氏の代表的な作品の一つとして、重要な位置づけにあることを示しています。

「九月の雨」は、哀愁漂うメロディと情景豊かな歌詞が見事に融合した、太田裕美さんの代表作であり、70年代を彩る名曲として今なお多くの音楽ファンに愛され続けています。

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