九條今日子

九條今日子（くじょう きょうこ）は、1935年10月22日に東京都麻布で生まれ、2014年4月30日に78歳でその生涯を閉じた日本の女優であり、のちに演劇・映画プロデューサーとして活躍しました。本名は寺山映子。女優時代の芸名は九条映子（九條映子）でした。特に知られているのは、詩人・劇作家の寺山修司と1963年から1970年にかけて婚姻関係にあったことです。離婚後も彼女は寺山の姓を名乗り続け、彼の死後にはその膨大な作品の著作権を管理し、寺山の芸術世界を世に伝え続ける活動に尽力しました。

三輪田学園中学校・高等学校を卒業後、九條映子の芸名で松竹歌劇団の舞台に立ち、芸能の世界に足を踏み入れました。その後、活躍の場を松竹映画に移し、女優として数々の作品に出演しました。この時期には、野村芳太郎監督の映画『黄色いさくらんぼ』（1960年）などでその姿を見ることができます。しかし、1963年4月に寺山修司と結婚したことを機に、一時的に女優業から身を引き、主婦としての生活を送りました。

芸能界から離れていた九條今日子は、1967年に寺山修司や横尾忠則らが結成した前衛的な演劇グループ「演劇実験室・天井桟敷」の創立に参加し、その製作を担当することで再びアートの世界に深く関わることになります。ここでは単なる裏方ではなく、寺山の異端的な演劇を支える要として手腕を発揮しました。演劇活動と並行して、寺山作品を中心に数多くの映画製作も手がけ、プロデューサーとしての新たな道を切り開きました。

1970年に寺山修司とは離婚しましたが、その後も寺山の姓を使い続け、1983年に寺山が急逝してからは、彼の遺した作品の著作権管理を一手に引き受けました。寺山ワールドを後世に伝えるため、全国各地で積極的に講演活動を行い、その多才な人物像や作品の魅力を語り継ぎました。有限会社テラヤマ・ワールドの代表取締役を務め、三沢市寺山修司記念館の名誉館長や三沢市観光大使としても、寺山ゆかりの地での活動を支えました。

近年では、2009年に弘前学院大学での講演を行うなど、精力的に活動を続けていました。しかし、2014年4月30日、東京都内の自宅で、肝硬変による食道静脈瘤破裂のため、78歳で波乱に富んだ生涯に幕を下ろしました。

九條今日子は、女優として、プロデューサーとして、そして寺山修司の最も近い理解者として、多岐にわたる足跡を残しました。彼女が出演した主な松竹映画には、主演作の『体当りすれすれ娘』（1959年）のほか、『有楽町0番地』（1958年）、『明日をつくる少女』（1958年）、『黄色いさくらんぼ』（1960年）などがあります。プロデューサーとしては、寺山修司監督の『田園に死す』（1974年）や、遺作となった『さらば箱舟』（1984年）など、多くの実験的・芸術性の高い映画製作に関わりました。また、『回想・寺山修司 百年たったら帰っておいで』や『ムッシュウ・寺山修司』といった著書を通して、寺山修司との日々や彼の人物像を記しています。その生涯と寺山修司との関係は、青目海による著書『寺山修司 彼と私の物語 -九條今日子の告白-』でも詳しく描かれています。彼女の存在は、日本の戦後文化、特に演劇や映画の世界において、独自の光を放ち続けたのです。

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