亀井茲常

亀井茲常（かめい これつね）

亀井茲常は、明治17年（1884年）4月17日に生まれ、昭和17年（1942年）5月2日に没した日本の華族、宮内官僚です。旧津和野藩主家である亀井家の第14代当主であり、爵位は伯爵でした。東京市渋谷区千駄谷町穏田に居住し、元政治家の亀井久興は孫にあたります。

生涯

茲常は、第13代当主である亀井茲明の子として、島根県鹿足郡津和野に生まれました。明治42年（1909年）に東京帝国大学文科大学哲学科を卒業後、式部官に任じられ、皇室の式典や語学研究のため欧米を歴遊しました。大正元年（1912年）に帰国後は、主猟官を兼任しました。

その後、東宮侍従に任じられ、大正10年（1921年）には皇太子裕仁親王（後の昭和天皇）の海外巡遊に随行を命じられました。昭和4年（1929年）に官を辞し、昭和17年（1942年）に58歳で死去しました。墓所は津和野町の亀井家墓所にあり、崇賢院殿忠誠茲常大居士の戒名が贈られています。

人物

茲常は、華族としての責務を果たす傍ら、文化的な活動にも関心を持っていました。上杉博物館には、岳父となる上杉茂憲が亀井邸を訪れ、茲常と3人の妹が庭園で接待する写真が残されており、当時の華族階級における見合い形式の一端を垣間見ることができます。茲常が妻の久と結婚したのは、このすぐ後のことでした。

妻・久の御輿入道具（上杉家の竹に雀紋入）と長女・修子生誕時のお食い初め道具（亀井家の四ツ菱紋入）は保存され、太皷谷稲成神社宝物殿に展示されています。また、美術に造詣の深かった父・茲明の影響からか、茲常自身が描いたと伝えられる油絵も残されています。

晩年には、長男である茲建が治安維持法違反の容疑で逮捕されるという出来事がありました。茲建は拘束中に転向を表明して釈放されましたが、華族としての処分が検討されることになりました。この対応に苦慮した宮内省の木戸幸一は、昭和天皇の御製（歌）に触発され、最終的に茲建を厳しく叱責することで処分を終えました。

栄典

1908年（明治41年）5月11日 - 正五位
1913年（大正2年）5月20日 - 従四位

家族・親族

妻：久 - 旧米沢藩主・上杉茂憲の五女
長女：修子 - 木山英一に嫁ぐ
長男：茲建 - 第15代当主、実業家
次男：伊地知正勝 - 初名は亀井茲勝、伯爵伊地知正興（伊地知正治の孫）の養子
次女：保子 - 伯爵東伏見邦英に嫁ぐ
三男：松平近義 - 初名は亀井茲駿、旧広瀬藩主家子爵・松平直平の養子
* 三女：鈴子 - 公爵三条実春に嫁ぐ

亀井茲常は、激動の時代を生きた華族の一人として、その生涯を通して日本の近代化に貢献しました。

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