亀田市

亀田市：消滅した街の物語

1973年（昭和48年）、函館市に編入合併された亀田市。その歴史はわずか2年1ヶ月と、日本の市町村の中でも特に短い期間でした。この記事では、亀田市の短いながらも興味深い歴史、地理、そして周辺地域との関わりについて詳細に解説します。

誕生と消滅

亀田市の起源は、1902年（明治35年）に亀田村、鍛冶村、神山村、赤川村、桔梗村、石川村の6ヶ村が合併して誕生した亀田村に遡ります。その後、1971年（昭和46年）に町制から市制に移行し、亀田市となりました。しかし、その2年1ヶ月後の1973年（昭和48年）に函館市に編入合併され、短い歴史に幕を閉じました。この存続期間は、京都府伏見市に次ぐ短さで、日本の市町村の中でも異例と言えるでしょう。

地理

亀田市は、大野平野の南東部、亀田川の中・上流域に位置する内陸都市でした。現在の函館市北西部にあたり、東西約11.5km、南北約14.7kmの広さを持っていました。周囲には袴腰岳（1108m、函館最高峰）などの山々が連なり、亀田川水系（亀田川、笹流川、赤井川、黒井川など）や松倉川水系が流れていました。また、笹流貯水池（ダム湖百選）や中野貯水池といった人造湖も存在しました。

地名由来

「亀田」という地名は、いくつかの説があります。アイヌ語の「シ・コッ」（大きな窪地）が転訛したという説や、『東北太平記』に記された地名「北洲カンメテ」から変化したという説、青森県、秋田県、新潟県にも同名の地名が存在することから、それらの地域からの移住者が地名を伝えたという説などがあります。また、湖に大亀が住んでいたことから「亀太の郡」と呼ばれていたという説も存在します。

函館との境界

函館市との境界は明確ではなく、複数の説があります。江戸時代の検問所「箱館桝形」付近、または1817年（文化14年）建立の猿田彦塚付近などが境界として考えられていました。しかし、『赤川町誌』によると、定住者が少なかったため、境界は曖昧で、明確になったのは安政年間頃と推定されています。

各地区の概要

亀田市は、いくつかの地区に分かれていました。それぞれの地区には独自の成り立ちと歴史があります。例えば、赤川地区は1713年（正徳3年）に開拓が始まり、鍛冶地区は古くから鍛冶屋が栄えた地域です。神山地区は1684年（貞享元年）に佐々木佐四郎が来住し開拓を始め、天然氷「函館氷」の製氷地として知られていました。石川地区は1857年（安政4年）に幕府運営の開墾場「御手作場」が開設された場所です。桔梗地区は野生の桔梗が自生していたことからその名が付けられました。そして亀田地区は、市の名前の由来にもなっている中心的な地域でした。

歴史

亀田地域には、縄文時代から人が定住していた痕跡があり、サイベ沢遺跡などから多くの遺物が出土しています。室町時代には、蠣崎氏（松前氏）によって亀田館が設置されたとされています。江戸時代には松前氏の支配下に入り、亀田番所が置かれました。箱館戦争後、明治時代に入ると、近代的な都市へと発展し、鉄道が開通するなど、交通網も整備されていきました。

亀田市の消滅とその後

1973年の函館市への編入合併は、亀田市の消滅を意味しました。しかし、亀田市の歴史と文化は、函館市の一部として受け継がれています。現在の函館市北西部には、かつて亀田市があったことを示す痕跡が多く残されており、地域住民たちの記憶の中に、亀田市の歴史は生き続けています。

参考文献

函館市史編さん室編 『函館市史』 函館市
神山三〇〇年祭実行委員会編 『神山三〇〇年誌』
赤川の歴史を探る会編 『赤川町誌』
その他多数の文献、史料

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