了翁道覚

了翁道覚（りょうおう どうかく）とは

了翁道覚（1630年 - 1707年）は、江戸時代前期に活躍した黄檗宗の僧侶です。彼は、その生涯を通じて、教育、文化、社会福祉、公共事業など、多岐にわたる分野で社会に貢献しました。幼少期の苦労を乗り越え、仏門に入ってからは、その深い信仰心と強い意志で、多くの人々に影響を与えました。

生い立ちと出家

了翁道覚は、寛永7年（1630年）に出羽国雄勝郡八幡村（現在の秋田県湯沢市）の貧しい農家に生まれました。幼名は与茂治といいました。幼くして母を亡くし、養子に出されるなど、恵まれない幼少時代を過ごしました。

12歳で曹洞宗の寺の寺僕となり、その後出家しました。14歳の時には、中尊寺で経典の散逸を嘆き、失われた経典の収集と一切経蔵の建立を誓いました。

修行時代

各地で修行を重ねた了翁は、瑞巌寺で五戒を授かり、天徳寺では荒行に励みました。そして、明の高僧隠元隆琦が来日すると、彼に師事し、黄檗宗の教えを深く学びました。

了翁の修行は非常に厳しく、自らの男根を断ち、指を砕いて燃やすなどの苦行も行いました。これらの苦行を通して、彼は強い精神力を養い、信仰を深めていきました。

錦袋円と社会貢献

苦行の中で霊夢を見たことがきっかけで、了翁は薬「錦袋円」を開発しました。この薬は多くの人々を救い、その収益を元に、経堂の建設や文庫の設立など、社会貢献活動に力を注ぎました。

特に、上野に開設した勧学寮は、日本初の一般公開図書館として知られています。ここでは、多くの書籍が公開され、貧しい人には食事や宿が提供されるなど、教育文化の普及に大きく貢献しました。

勧学寮の増築と経蔵の寄進

了翁は、勧学寮を増築し、多くの経典や書籍を収蔵しました。また、全国各地の寺院に経蔵を寄進し、仏教文化の発展に貢献しました。

さらに、大火や飢饉などの災害時には、私財を投げ打って被災者を救済しました。彼の献身的な活動は、多くの人々の尊敬を集め、「如来様」とまで呼ばれました。

その他の活動

了翁は、図書館の設立だけでなく、産業発展にも貢献しました。干拓事業や灌漑工事を援助し、人々の生活を豊かにしました。

また、仏教、儒教、道教を講じる講座を開き、貧しい人々にも教育の機会を提供しました。彼の幅広い活動は、当時の社会に大きな影響を与えました。

晩年と最期

晩年は、黄檗山に天真院を建てて過ごし、弟子の育成に励みました。最期は、坐禅をしながら静かに息を引き取りました。

了翁の死後も、彼の遺志は受け継がれ、その功績は長く語り継がれています。上野寛永寺では、彼の命日にあたる日に盛大な法要が執り行われています。

了翁道覚の主な功績

経典の収集と経蔵の建立
日本初の一般公開図書館である勧学寮の設立
薬「錦袋円」の開発と医療活動
災害時の救済活動
教育文化の普及
産業発展への貢献

まとめ

了翁道覚は、その生涯を通じて、仏教の教えに基づいた社会貢献を実践しました。彼の功績は、現代においても私たちに多くの示唆を与えてくれます。苦難を乗り越え、人々のために尽くした彼の生き方は、まさに模範とすべきものでしょう。

了翁の足跡は、教育、文化、社会福祉など、多岐にわたる分野で、今もなお、私たちの社会に深く根付いています。

もう一度検索