二条新御所

二条新御所：織田信長の京都における拠点

二条新御所は、現在の京都市中京区二条殿町に位置した御所であり、「二条御新造」「二条殿」「旧二条城」とも呼ばれ、現在は二条殿跡として知られています。織田信長が京都での滞在拠点として設けたこの城館は、かつて足利義昭の二条御所と同じ場所にあったとする説がありましたが、近年の研究により異なる場所にあったことが判明しています。

歴史

信長の拠点として

天正4年（1576年）、信長は安土城を拠点としながらも、京都にも自身の屋敷を構えることを計画しました。当時、信長は二条通南側の妙覚寺に滞在していましたが、隣接する二条家の邸宅の庭からの眺望を気に入っていました。二条邸は「洛中洛外図屏風」にも描かれる名邸で、戦国時代の京都の主要道である室町通に面していました。

この地はかつて後鳥羽上皇の仙洞御所・三条坊門殿、後嵯峨上皇の御所・押小路烏丸殿（泉殿）があった場所で、美しい泉が特徴でした。その後、二条良実の邸宅となり、二条家の本宅として長く使用されました。

天正4年3月、信長は上洛時の宿所とするため、二条晴良から二条邸を譲り受け、二条家には報恩寺の替地を与えました。同年5月、信長は京都所司代の村井貞勝に「二条殿御構へ」の普請を命じました。

7月には、かつて松永久秀の居城であった大和国の多聞山城の主殿が移築され、8月には寝殿や御成の間も造営されました。信長は自身の宿所として本格的に整備を進め、9月には多聞山城から移築された主殿が完成しました。

天正5年（1577年）閏7月12日、信長は初めてこの「二条新御新造」に入邸し、以後2年ほどをここで過ごしました。江村専斎の『老人雑話』には、当時の様子が記録されており、義昭の二条御所よりも遥かに小さい規模であったことが記されています。このことから、信長の御所に対する考え方が窺えます。

信長の宿所が定まったことは、公家社会にとっては歓迎すべきことでした。将軍家が不在の京都において、朝廷を支える信長が武家の大将として定まった場所にいることは、安定感をもたらしたと考えられます。

誠仁親王の御所として

天正7年（1579年）11月15日、信長は二条御新造を正親町天皇の皇太子・誠仁親王に献上し、親王家の御所となりました。これにより、「二条新御所」と呼ばれるようになります。11月22日には、東宮・誠仁親王と若宮・和仁王（後の後陽成天皇）が移徒しました。

本能寺の変と二条新御所

天正10年（1582年）6月2日、本能寺の変が勃発すると、妙覚寺にいた信長の嫡男・信忠は、本能寺へ向かおうとしましたが、村井貞勝らの進言により防御に優れた二条新御所へ移りました。異変を察知した公家も親王一家の安否を気遣い駆けつけましたが、明智勢に阻まれ入れない者もいました。

信忠は二条新御所に籠城し、誠仁親王らを内裏に移した後、明智勢と奮戦しました。しかし、村井貞勝ら60余名が討ち死にし、信忠も自害、二条新御所は灰燼に帰しました。

その後

本能寺の変後、二条新御所の跡地は浄土宗の僧・貞安に下され、大雲院が建立されました。

位置について

二条新御所は、足利義昭の二条御所跡に設けられたとする説がありましたが、山科言継の記録から、別の場所にあったと考えられています。誠仁親王の時代には、禁裏を「上の御所」と呼んだのに対し、二条新御所は「下の御所」と呼ばれていたことから、禁裏の南方にあったと考えられます。

本能寺の変の際、信忠が妙覚寺から二条新御所へ陣を移したことからも、両者が近傍にあったことが推測されます。また、『信長公記』には、小沢六郎三郎が二条新御所に駆けつけた際、「町通り（現新町通）二条（二条通のこと）」へ「上が」って御構えに駆け込んだと記されていることから、二条新御所は二条通南方にあったことが明らかです。

現在、両替町通御池上ルには「此附近 二条殿址」、室町通御池上ルには「二条殿御池跡」と彫られた石碑が建てられています。付近には「二条殿町」「御池之町」などの地名が残り、御池通の名前の由来となっています。跡地には大雲院が創建されましたが、後に秀吉の京都改造に伴い寺町四条下ルに移転しました。

まとめ

二条新御所は、織田信長が京都における拠点として築いた重要な施設であり、その後の歴史に大きな影響を与えました。本能寺の変で焼失しましたが、その跡地には今もなお、当時の面影を偲ばせる史跡が残っています。

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