二枚鑑札

二枚鑑札（にまいかんさつ）

二枚鑑札という言葉は、大相撲の世界において特定の役職を兼務することを指します。具体的には、現役の力士や行司が年寄の役割を同時に果たすケースを指し、特に明治時代に制度化された背景を持っています。この制度は、力士や年寄がそれぞれ警察から営業鑑札を受け取る際に、両方の役割を兼務する場合には二枚の鑑札が必要なことから名付けられました。

歴史的に見ても、二枚鑑札は特に明治から大正時代にかけて多く見られました。この時期には、一部の力士が年寄名で土俵に舞台に上がることもありましたが、昭和に入るとその数は次第に減少していきました。昭和10年代には再び二枚鑑札となる例が増えたものの、1958年に行司の年寄兼任が廃止されたことで、力士の二枚鑑札も実質的に消滅したと考えられています。

その後も特例がいくつか存在しましたが、ほとんどは現役力士が引退後に年寄として部屋を継承する流れが一般的です。例えば、1959年11月から1960年5月にかけてのケースでは、横綱栃錦が9代春日野を襲名する際に、特例として二枚鑑札が認められました。栃錦は当時、相撲協会の看板でもあり、次期横綱としての期待が高かったためです。

また、力士の断髪式に関しても重要な特徴があります。二枚鑑札の力士が断髪式を行う際、師匠が止め鋏を入れることができません。そのため、通常は一門の親方などが止め鋏を入れる役割を担います。これにより、現役としての特定の活動が制限されることがある一方で、一部の例外的な場合では、現役力士としての地位を保ちながら指導者の役割を果たすことが求められます。

近年の例では、2007年に起こった時津風部屋力士暴行死事件の影響を受け、現役であった時津海正博が事態収拾のために引退し、その部屋を継承しました。このような非常事態において、現役力士が年寄としての役割を果たすことが求められる場合もあるのです。また、二所ノ関部屋の継承騒動でも、金剛正裕が現役を引退してから後継の役を担ったことがあります。

更に、特定の力士が現役中に自身の道場を設立し、引退後に年寄名義を名乗る場合もあります。例えば、双葉山定次は特例として現役中に双葉山道場を開設しました。このような二枚鑑札の例は、相撲界における独特の文化と規則を反映した事例であり、現役と年寄という二つの役割への興味深いアプローチを示しています。

まとめ

二枚鑑札は、大相撲における特異な制度や伝統を象徴しています。現代ではあまり見られなくなったこの形式ですが、相撲界の歴史において重要な役割を果たしてきたことは間違いありません。また、この制度は、力士や年寄の生涯を通じての変化や継承の過程を知る上で、貴重な事例を提供しています。

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