五ツ嶋奈良男

五ツ嶋奈良男の生涯と功績

大相撲界で強大な存在感を放っていた五ツ嶋奈良男（いつつしま ならお）は、1912年12月22日に長崎県南松浦郡奈良尾村に生まれました。本名は金崎伊佐一（かなさき いさいち）で、彼は生まれてから相撲専門の世界に飛び込むまで地元の漁師として働いていました。特に地元での相撲活動を通じて、彼は鍛えられた足腰を手に入れ、力士としての素質をのばしました。

彼の相撲人生が大きく変わったのは、常ノ花寛市の引退興行が長崎を訪れた際に、彼が偶然注目され、出羽海部屋に入門したことです。1930年5月場所で初土俵を踏みました。しかし、出世は遅く、地道な努力を重ねて1936年5月場所には新入幕を果たします。彼はその後、強靭な足腰と腕力を駆使して幕内上位での活躍を見せました。

五ツ嶋は、稽古では強力でありながら本場所では思うようなパフォーマンスが発揮できない「稽古場横綱」とも称され、1940年1月場所では強豪の双葉山定次に勝利し、11勝4敗という好成績を収めました。この結果を受け、彼は関脇に昇進します。関脇としても彼の力強さは変わらず、同じく双葉山を下すなどの活躍を見せ、終盤には安藝ノ海との優勝争いを繰り広げました。

しかし、1941年の1月場所で新大関となるものの、両膝の故障に悩まされます。最終的には新大関としての地位を守ることができず、1942年1月場所で関脇に陥落しました。その後、相撲を続ける意欲も薄れ、幕を閉じます。大関としての在位期間は短命で、昭和時代においても一際異彩を放つ存在でした。

力士を引退後、五ツ嶋は故郷に戻りかまぼこ工場を経営しましたが、再び上京し新川で食料品店を開かしたり、後に相撲料理店「みどり」やホテル経営も手掛けました。彼は1973年5月6日に逝去しましたが、その功績は後輩力士たちにもたらした影響を含め、今もなお語り継がれています。

五ツ嶋の生い立ちに影響を受けた力士の一人、佐田の山晋松は、五ツ嶋にあこがれて角界入りを決意したと述べています。また、彼は現役時代から酒豪として知られ、日本酒を1日5升飲むという豪快さで知られていました。後輩たちに対しても非常に面倒見が良く、恩人として尊敬される存在であったことは、後に大関となる増位山大志郎の自伝にも触れられています。

五ツ嶋奈良男は、相撲界に短いながらも鮮烈な足跡を残し、数々の名勝負や人間関係を通じて、後の力士たちに大きな影響を与えました。彼の誇り高き姿勢と強い意志は、今後も相撲を支える要素として語り継がれることでしょう。

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