五三経

五三経（ごさんきょう）

『五三経』（Pañcattaya-sutta）は、パーリ仏典の中部経蔵に収められている第102経です。この経典は、釈迦が比丘たちに対して死後の様々な見解を展開し、仏法について教えを説くもので、特に死後の存在に関する議論を中心に構成されています。

経典の背景と目的

釈迦がこの経を説いたのは、主にサーヴァッティーにあるアナータピンディカ園（祇園精舎）での出来事です。比丘たちはその場に集まり、釈迦からの教えを受けることで、仏法への理解を深めました。経典のタイトルは、死後に関する5つの見解を示すことに由来しています。これらは「有我論」「断滅論」「涅槃論」と、さらに「有我論」を細分化して合計5種類に分類されています。

死後に関する見解

この経で釈迦は下記の見解について言及しました。
1. 有我論: 死後にも存在があるとする見解。
2. 有想論: 有想のものについての見解。
- 無色界や色界の想を持つ有想論。
- 一つや多く、有限や無限の想についての考察。
3. 無想論: 無想の状態についての考え。
- 各界の想を滅する観点。
4. 非想論: 有想でも無想でもない存在の見解。
5. 断滅論: 死後に存在が消滅するという考え。
6. 涅槃論: 現在の生で存在を滅する方法について。

これに加え、釈迦は時間や空間、苦楽などの諸見解にも触れました。時間に関しては、「常住」や「無常」「常住かつ無常」など、空間については「有限」「無限」「有限かつ無限」といった見解が示されています。

苦楽論では、「楽のみ」や「苦のみ」、「苦楽」の概念が検討され、さらにそれを超える境地を目指すべきだと強調されました。

禅定の重要性

釈迦は、これら多様な見解を越えた世界が存在し、仏道を歩む者はそれに至るために禅定を重視することの重要性を説きました。比丘たちは、この教えに大いに歓喜し、仏法を学ぶ意義を新たに感じたことでしょう。

参考文献

この経典は日本語訳として、以下の資料に収められています。

• - 『南伝大蔵経・経蔵・中部経典3』（第11巻上） - 大蔵出版
• - 『パーリ仏典 中部（マッジマニカーヤ）後分五十経篇I』 - 片山一良訳、大蔵出版
• - 『原始仏典 中部経典3』（第6巻） - 中村元監修、春秋社

関連項目

• - 六師外道
• - 六十二見
• - 禅定

関連リンク:

• - Pañcattayasuttaṃ - Tipitaka.org

このように『五三経』は、死後の存在や時間、空間に対する多様な視点を提供することで、仏教の真理と深い理解への道を示しています。

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