五光製作所

株式会社五光製作所

株式会社五光製作所は、1948年（昭和23年）に創業した輸送用機械器具を製造するメーカーです。当初はバス車体用部品の製造販売を主な事業目的としていましたが、以来、鉄道やバスなどの交通機関に関連する多岐にわたる製品を手がけています。

事業と主な製品

創業から間もない1940年代後半には、国鉄（現在のJR）向けのディーゼルカー用部品、例えば変速機や逆転機、減速機といった駆動系の重要部品や、軌道モーターカー、貨車移動機といった車両を供給し、その技術力を培いました。

旅客の快適性向上にも早くから着目し、客室用機器の開発にも力を入れました。特に知られているのが、石油燃焼式の温気暖房機である「五光ヒータ」です。これはドイツのベバスト社からライセンスを得て生産されたもので、寒冷地を走行する気動車やバスにおいて、車内の暖房性能を大きく向上させ、乗客にとってより快適な移動空間を提供することに貢献しました。

同社の製品開発における転換点の一つとなったのが、衛生設備分野への進出です。1964年（昭和39年）、運輸省からの研究補助金を受け、国鉄自動車局の発注に関連したバス用の循環式汚物処理装置の開発に着手しました。当時、長距離運行化が進む高速バスや遊覧バスにとって、車内トイレの衛生的な維持は重要な課題でした。開発された循環式汚物処理装置は、東名・名神高速道路を走る高速バスをはじめ、様々な長距離運行バスに採用され、大きな成果を上げました。

さらに、この循環式汚物処理装置の技術は、鉄道車両にも応用されます。1967年（昭和42年）には、日本の大動脈である東海道新幹線の初代車両、0系新幹線に採用されました。これを皮切りに、その後の歴代新幹線車両においても、五光製作所の汚物処理装置が標準的に採用されるようになり、日本の高速鉄道の衛生インフラを支える存在となりました。

時代が進むにつれて、より高度で快適な設備が求められるようになります。1989年（平成元年）頃には、豪華寝台列車として知られる「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」といった列車向けに、個室内に設置する便洗ユニットシステムを開発しました。これは、プライベートな空間でより高いレベルの快適性と機能性を両立させた画期的なシステムでした。

そして、同社の衛生設備技術の集大成ともいえるのが、真空式トイレシステムです。1991年（平成3年）、スウェーデンおよびフィンランドのEvac社と技術提携を結び、この先進的なシステムの製造と販売を開始しました。真空式トイレは、水の使用量を大幅に削減できる上、配管のレイアウトの自由度が高いという特長を持ちます。日本国内では、九州旅客鉄道（JR九州）の車両で初めて試験的に導入され、その性能が評価されました。翌1992年（平成4年）には、JR九州の787系電車に本格的に採用され、これを皮切りに、鉄道車両だけでなく、高速バスや船舶など、水やスペースに制約のある様々な交通機関において広く採用されるようになり、その普及に大きく貢献しています。

株式会社五光製作所は、設立当初のバス部品製造から始まり、鉄道車両の駆動系部品、旅客の快適性を高める暖房機、そして革新的なトイレシステムに至るまで、日本の公共交通機関の進化を支え、乗客の利便性と快適性、そして衛生環境の向上に長年にわたり貢献し続けている企業です。

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