井上正甫

井上 正甫の生涯と業績

江戸時代中期から後期にかけて、井上正甫（いのうえ まさもと）は重要な役職に就いていた大名であり、遠江国浜松藩の3代藩主および陸奥国棚倉藩の初代藩主として知られています。彼の官位は従五位下・河内守で、浜松藩井上家の8代目にあたります。

生い立ちと藩主就任

安永4年（1775年）、井上正甫は2代藩主である父、井上正定の長男として誕生しました。父の死去に伴い、天明6年（1786年）に家督を継ぎ、浜松藩主としての責任を担うことになります。享和2年（1802年）には、11代将軍・徳川家斉の奏者番に任命され、大名としての地位を確固たるものにしていきました。

事件とその影響

文化13年（1816年）秋、正甫は信濃国高遠藩の藩主内藤頼以に招かれ、狩りを楽しんでいた際、思わぬ事件に巻き込まれます。狩りに熱中している間に千駄ヶ谷村に迷い込み、そこで農家の女房に対して不適切な行為をしてしまいます。彼の行動は女房の夫に見つかり、夫は正甫に対して暴力を振るいますが、正甫は抜刀して夫を重傷にさせる事態に至りました。

この事件は瞬く間に広まり、正甫は「密夫大名」として江戸の町で囃し立てられることとなります。幕府の中枢にもこの事件は伝わり、同年の12月23日には奏者番を免ぜられ、その後文化14年（1817年）には陸奥棚倉へ移封を命じられました。しかし、正甫は病を理由に実際には棚倉へ赴くことはありませんでした。

隠居と後の世

井上正甫は文政3年（1820年）4月16日に家督を長男の正春に譲り、隠居生活に入ります。正春の時代の弘化2年（1845年）には井上家が浜松に復帰しますが、正甫自身はその後も病により帰国することはありませんでした。彼は安政5年（1858年）1月26日に84歳で生涯を閉じました。

系譜

井上正甫の家系は彼の父である井上正定と母親の桜井氏から構成されており、正室には真田幸弘の娘があり、継室には松平武寛の娘がいるなど、著名な人物との婚姻を通じて血筋をつなげていました。また、正甫には複数の子女があり、長男の井上正春をはじめ、次男や八男、九男といった子供が存在していました。彼の家系は現在においても歴史的な価値を持っています。

まとめ

井上正甫は、江戸時代における大名の一人であり、彼の生涯には様々な事件や出来事が存在しました。特に、「密夫大名」としての名は、彼の行動がもたらした波紋を物語っています。正甫の歴史的な背景や彼家の系譜は、江戸時代の日本を理解する上で重要な要素となっています。

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