井出謙治

井出謙治：潜水艇導入に尽力した海軍大将

井出謙治（いで けんじ）は、1870年（明治3年）に生まれ、1946年（昭和21年）に没した日本の海軍軍人です。海軍兵学校を次席で卒業し、最終階級は海軍大将にまで昇進しました。

生い立ちと海軍入隊

井出謙治は、幕臣の家に生まれました。開成中学を経て、1885年に海軍機関学校に入校しますが、同校の廃止に伴い、1887年に海軍兵学校へ編入。1890年に次席で卒業し、海軍将校としてのキャリアをスタートさせます。初期は、巡洋艦「吉野」での勤務や、砲艦「大島」航海長などを歴任しました。

潜水艇への情熱

1899年、井出は私費でアメリカへ留学し、当時まだ黎明期だった潜水艇に強い興味を抱きます。製造会社へ連日通い見学を希望しますが、購入を前提とする条件で断られ続けます。しかし、退役したアメリカ海軍少佐との出会いを通じて潜水艇の航海を体験、その可能性を確信します。帰国後、海軍省の命により潜水艇の購入交渉に当たりますが、予算の問題で実現には至りませんでした。しかし、この経験を通じて、井出は潜水艇の重要性を深く認識し、その後の海軍での活動に大きな影響を与えました。

海軍での活躍

帰国後は、巡洋艦「朝日」分隊長、駆逐艦「漣」艦長などを歴任し、海軍省副官兼海相秘書官として山本権兵衛大臣に仕えました。その後も、第2潜水艇隊司令兼水雷母艦「豊橋」艦長、造船造兵監督官（イギリス出張）、イギリス大使館付武官、「磐手」艦長など、様々な要職を経験。1913年には海軍少将に昇進し、呉水雷隊司令官、呉鎮守府参謀長、第4戦隊司令官、軍務局長、海軍次官などを歴任し、着実にキャリアを重ねていきました。

1924年には海軍大将に進み、軍事参議官を務め、1930年に退役しました。

人物像

井出謙治は、海軍部内でも傑出した記憶力の持ち主として知られていました。特に、同僚の岡田啓介（海軍大将）と並び称されるほどで、その能力は多くの人に知られていました。また、潜水艇の導入に尽力したことからもわかるように、新しい技術や知識への関心が高く、常に海軍の発展を考えていた人物であったと言えるでしょう。

栄典

井出は、その功績から数々の栄典を受けています。

位階
1896年（明治29年）2月10日 - 従七位
1898年（明治31年）3月8日 - 正七位
1905年（明治38年）2月14日 - 正六位
1908年（明治41年）12月11日 - 従五位
1914年（大正3年）1月30日 - 正五位
1917年（大正6年）12月28日 - 従四位
1923年（大正12年）2月10日 - 正四位
1925年（大正14年）2月28日 - 従三位
1925年（大正14年）12月28日 - 正三位

勲章
1920年（大正9年）11月1日 - 勲一等旭日大綬章
* 1921年（大正10年）7月1日 - 第一回国勢調査記念章

まとめ

井出謙治は、潜水艇の導入に情熱を燃やし、その後の日本海軍の発展に大きく貢献した人物です。また、その優れた記憶力と、海軍の要職を歴任したことから、組織運営にも手腕を発揮した人物であったと言えるでしょう。彼の功績は、日本の海軍史において特筆すべきものとして、記憶されるべきです。

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