松田昌士

松田昌士：国鉄改革を成し遂げた実業家の生涯

松田昌士（まつだまさたけ、1936年 1月9日 - 2020年 5月19日）は、日本の実業家であり、会社経営者です。国鉄分割[[民営化]]を主導した「国鉄改革3人組」の一人として知られ、東日本旅客鉄道（JR東日本）の社長・会長を歴任しました。北海道北見市出身で、その生涯は日本の鉄道史における重要な転換期と深く関わっています。

国鉄改革の立役者

松田氏は、井手正敬、葛西敬之とともに「国鉄改革3人組」と称され、長年赤字経営に苦しんでいた日本国有鉄道（国鉄）の分割民営化に尽力しました。国鉄の解体と民営化は、当時、社会的な関心が非常に高く、その推進には多くの困難が伴いました。松田氏は、その先頭に立ち、大胆な改革を断行しました。

民営化後のJR東日本では、社長・会長として辣腕を振るい、経営を軌道に乗せました。また、小泉内閣が進めた構造改革においては、道路関係四公団民営化推進委員会の委員を務めるなど、国政にも深く関わりました。松田氏のリーダーシップは、民営化の成功例として高く評価されています。

2008年には、日本経済新聞の『私の履歴書』に寄稿し、国鉄民営化の裏側を赤裸々に語っています。この中で、松田氏は当時の状況や自身の考えを率直に述べており、その証言は貴重な資料となっています。また、国鉄時代の上司には吉田輝雄がいました。

生い立ちと学歴

1936年、北海道常呂郡野付牛町（現在の北見市）で生まれた松田氏は、幼少期を札幌市で過ごしました。北海道札幌北高等学校を経て、1959年に北海道大学法学部を卒業。その後、同大学院に進学し、1961年に法学研究科を修了しました。大学卒業後、国鉄に入社し、鉄道の世界に足を踏み入れました。

国鉄・JRでのキャリア

国鉄入社後、松田氏は様々な部署を経験し、その能力を発揮しました。1985年には国鉄北海道総局総合企画部長に就任し、ジョイフルトレイン「アルファコンチネンタルエクスプレス」の導入に尽力しました。1986年には、国鉄再建実施推進本部事務局長として、国鉄分割[[民営化]]に向けた具体的な準備に携わりました。

1987年、国鉄が分割民営化され、JR東日本が発足すると、松田氏は常務取締役に就任しました。その後、1990年に副社長、1993年には社長、そして2000年には会長へと昇進し、JR東日本の経営を牽引しました。

2006年、JR羽越本線脱線事故の責任を取り、会長を辞任し、取締役相談役に退きました。しかし、その後もJR東日本に貢献し続け、2011年には嘱託に就任しています。2009年には北海道大学名誉博士の称号を授与されています。

中国への新幹線技術移転問題

松田氏がJR東日本会長を務めていた時期に、川崎重工業が中国に新幹線技術を提供したことが問題となりました。この技術移転は、中国による技術盗用を招き、国際的な論争に発展しました。松田氏は、この問題に関与していたとされています。

労働組合との関わり

国鉄末期からJR東日本創設期にかけて、松田氏は労働組合との関係においても大きな役割を果たしました。国鉄時代に最も有力であった国鉄労働組合（国労）を弱体化させるために様々な施策を講じ、結果として国労は分裂し、少数組合に転落しました。一方で、民営化に賛同した組合とは協調路線を取りました。

労働組合との関係においては、複雑な側面も抱えています。松田氏は、国労に対して強硬な姿勢を示し、排除を辞さない姿勢を見せました。一方で、JR総連との間には蜜月関係を築き、その関係は現在も続いているとされています。

野球界との関わり

松田氏は、大の野球好きとしても知られており、国鉄スワローズ（現・東京ヤクルトスワローズ）の活動を支援し、各地の鉄道管理局の硬式野球部を積極的に支援しました。全日本[[野球会議]]の日本代表編成委員長も務め、北京オリンピック野球日本代表監督に星野仙一を招聘しました。また、オリンピックに野球競技を復活させるために、国際野球連盟にアメリカ人会長を就任させるロビー活動も行いました。

死去と追贈

2020年 5月19日、松田氏は肝臓がんのため84歳で亡くなりました。その功績を称え、政府は没後、従三位を叙するとともに、旭日大綬章を追贈しました。

松田昌士は、その生涯を通じて、日本の鉄道史に残る大きな足跡を残しました。国鉄の民営化という難題を成し遂げ、その後のJR東日本の発展に大きく貢献した人物として、今後も語り継がれることでしょう。

著書

『なせばなる民営化JR東日本自主自立の経営15年の軌跡』（生産性出版、2002年3月） ISBN 4820117246

脚注

注釈

出典

関連項目

国鉄分割[[民営化]]
* 日本国有鉄道改革法

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