伊達実元

伊達実元（だて さねもと）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。陸奥国信夫郡の大森城を拠点とし、その生涯は波乱に満ちていました。

生い立ちと上杉氏との関係

大永7年（1527年）、伊達稙宗の子として生まれた実元は、幼名を時宗丸と名付けられました。実元の父方の祖母が上杉氏の出身であったことから、越後守護の上杉定実の養子となる話が進められました。母が越後鳥坂城主・中条藤資の妹であったことも、この縁組に影響したと考えられます。定実から一字を授かり、上杉実元と名乗る準備も進められました。

伊達氏の家紋として知られる「竹に雀」は、この時、名刀「宇佐美貞光」と共に実元に贈られた引出物でした。

天文の乱と伊達家への帰還

しかし、天文11年（1542年）に勃発した天文の乱により、実元の運命は大きく変わります。父・稙宗が越後に向かう実元に精鋭100騎を随行させようとしたことに、兄・晴宗が反発。かねてから稙宗の政策に不満を抱いていた重臣たちの支持を得て、稙宗を幽閉しました。これにより、南奥羽全域を巻き込む大規模な内乱が勃発します。実元は稙宗方として奮戦しましたが、乱は晴宗方の勝利に終わり、実元は降伏を余儀なくされました。同時に越後でも入嗣反対派が勢力を増し、実元の上杉氏への入嗣は立ち消えとなりました。

信達地方の統治と伊達家の発展

乱後、晴宗が米沢城に居城を移すと、実元は晴宗の二女を娶り、大森城主として信達地方の統治を任されることになります。当時の所領は、信夫郡の内31か村、名取郡の内2か村であったと記録されています。甥である輝宗が当主となると、田村氏や相馬氏との戦いに参加し、隣接する畠山氏や大内氏といった小大名を伊達家の支配下に組み込んでいきました。天正2年（1574年）には、二本松の畠山義継と戦い、その支城である八町目城を攻め落としています。また、天正4年（1576年）の伊達氏と相馬氏の戦いでは、十六番備として伊具表に出陣しました。

隠居と晩年

天正11年（1583年）、実元は嫡男・成実に家督を譲り、八丁目城に隠居して棲安斎と号しました。しかし、隠居後も一門の長老として外交や調略に携わり、成実と共に伊達政宗の苦境を度々救いました。

天正15年（1587年）4月16日、八丁目城にて61歳で死去。天保7年（1836年）には、亘理伊達氏第12代当主・伊達宗恒によって大雄寺に実元の霊屋が建立されました。この霊屋は、昭和49年（1974年）に成実霊屋・実氏霊屋と共に亘理町の文化財に指定されています。

系譜

正室：鏡清院（伊達晴宗の二女）
子：伊達成実

伊達実元は、激動の時代を生き抜き、伊達家の発展に大きく貢献した人物として、その名を歴史に刻んでいます。

参考文献
『亘理町史』 上巻、宮城県亘理郡亘理町、1975年。
長谷川伸「南奥羽地域における守護・国人の同盟関係」『地方史研究』254号、1994年。
佐藤貴浩「伊達領国の展開と伊達実元・成実父子」『戦国史研究』65号、2013年。

関連事項
『独眼竜政宗』（1987年NHK大河ドラマ、演：竜雷太）

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