交河故城

交河故城：シルクロードの要衝、古代都市の壮大な遺跡

交河故城（こうがこじょう）は、中国新疆ウイグル自治区トルファン市に位置する、古代都市の遺跡です。ウイグル語では「ヤルゴル・カディムキ・シェヒリ」と呼ばれています。この遺跡は、世界最大級かつ最古級の版築都市として知られ、その保存状態の良さから、古代の都市構造や建築技術を今に伝える貴重な存在です。また、中国で唯一、漢代から残る都市遺跡としても非常に重要な意味を持っています。

自然の要害を活かした立地

交河故城は、柳葉形の台地上に築かれており、周囲は約30メートルの断崖に囲まれています。この自然の地形が、都市を外敵から守る天然の要塞として機能していました。遺跡の全長は約1650メートル、最大幅は約300メートル、総面積は約38万平方メートルに及びます。その規模からも、かつてこの地が重要な都市であったことが伺えます。

歴史

交河故城は、紀元前2世紀に建設されたとされています。紀元前108年から450年までは、車師前国の都として栄えました。漢代には「戊己校尉」がこの地に置かれ、この地が政治的にも重要な場所であったことを示しています。450年から640年には高昌に属し、640年から9世紀初頭には唐の交河県となりました。唐代には西域の最高軍事機関である安西都護府が設置され（640年から658年）、この都市がシルクロードにおける軍事的な要衝であったことが分かります。9世紀中葉には高昌回鶻の管轄下に入り、14世紀に戦火によって破壊され、その歴史に幕を閉じました。

都市構造

故城の中心部には、都市を東西に分ける中央大道が貫いています。東エリアの中央部には、塀で囲まれた官府エリアが存在しました。西エリアと城域北部には寺院エリアがあり、現在でも50以上の遺跡が確認できます。中でも、南北に88メートル、幅が59メートル、面積が5200平方メートルもの広さを誇る巨大な寺院は、南北朝時代のものとされ、その壮大さに圧倒されます。北部エリアには101基もの仏塔が整然と並んでおり、その景観は圧巻です。これらの仏塔は、小さい方塔が25基ずつ4組を構成し、その中間に大きな方塔が1基配置されています。

南の城門から都市に入ると、甕城を経て幅10メートル、全長350メートルの南北大道が続いています。これが交河故城の幹線道路です。東側には崖下に通じる城門があり、大道の北部は最大の寺院へと続いています。これらの構造からも、当時の都市計画や生活の様子を垣間見ることができます。

建築技術

交河故城の建物は、減土法という古代の建築技術を用いて造られています。版築や土煉瓦で壁が築かれ、アーチ状の構造や小梁の屋根を持つ地下、または半地下の構造が多く見られます。これは、現地の高温な気候に対応するための工夫であり、当時の建築技術の高さを物語っています。

世界遺産としての価値

交河故城は、1961年に中華人民共和国国務院によって第一批全国重点文物保護単位に指定され、2014年には「シルクロード：長安-天山回廊の交易路網」の構成資産として、ユネスコの世界遺産に登録されました。これは、交河故城がシルクロードの重要な拠点であり、歴史的・文化的に非常に高い価値を持つことを証明しています。

交河故城は、古代都市の繁栄と衰退を物語る貴重な遺跡です。その歴史的な価値、独特な都市構造、そして自然の地形を活かした立地は、訪れる人々を魅了し続けています。

もう一度検索