戊己校尉

戊己校尉（ぼきこうい）

戊己校尉は、中国の前漢時代以降に設置された官職であり、主に西域地域を統治・管理する役割を担っていました。西域の安定と漢王朝との関係維持において重要な役割を果たしました。

設置と役割

『漢書』によると、戊己校尉は元帝の初元元年（紀元前48年）に初めて設置されました。これは、車師前王の土地（現在の高昌付近）において屯田を開墾し、食料を確保することが目的でした。校尉には、丞と司馬が各1名、そして5名の候が属官として配置され、それぞれ比六百石の秩禄が与えられました。

名称の由来

戊己校尉という名称の由来には、いくつかの説があります。

方角を持たない説: 十干のうち、甲乙丙丁庚辛壬癸はそれぞれ方角に対応していますが、戊と己は特定の方向を持たないため、定住地を持たない校尉になぞらえたという説。
中央鎮撫説: 戊と己は中央に位置し四方を鎮撫することから、西域の中心に位置して周囲を鎮撫する校尉になぞらえたという説。

これらの説がありますが、正確な由来は定かではありません。

歴史的変遷

後漢時代には、「戊己二校尉」として、戊校尉と己校尉の2名が置かれ、これらを総称して戊己校尉と呼んだようです。王莽の時代に西域が漢王朝から離反したため、後漢初期には一時的に戊己校尉は廃止されました。しかし、永平16年（73年）に再び設置され、班超の活躍もあって西域との関係が改善されました。しかし、西域情勢の悪化により、建初元年（76年）に再び漢に呼び戻されました。その後、永元3年（91年）に班超の活躍により再び設置されることになりました。

後漢末期には再び西域との交通が途絶えましたが、三国時代の魏の黄初3年（222年）に西域からの使者が訪れたことを契機に、再び戊己校尉が置かれました。この時代には、涼州刺史が戊己校尉を兼任するようになりました。

このように、戊己校尉は時代の変化や西域情勢に応じて、設置、廃止、再設置を繰り返しました。その役割も、屯田経営から西域全体の統治・管理へと変化し、漢王朝にとって西域がいかに重要であったかを示す官職と言えるでしょう。

参考文献

* 班固著『漢書』巻19上百官公卿表上、巻96上西域伝上

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