交響曲 (ラロ)

ラロ：交響曲ト短調

エドゥアール・ラロによる《交響曲ト短調》は、1885年から1886年にかけて書かれた作品で、事実上、作曲家最後の管弦楽曲となりました。ラロはこれ以前にも交響曲の創作を試みていたようですが、それらの初期の試みは失われたか破棄されたと見なされており、本作が唯一現存する交響曲とされます。

楽章構成は古典派の伝統を踏襲しつつも、旋律線やオーケストレーションにはラロならではの南欧的な響きが色濃く表れており、全体としてロマン主義音楽の豊かな内容を備えています。

楽曲構成

この交響曲は全4楽章で構成されており、標準的な演奏時間は約28分です。構成は以下の通りです。

1. アンダンテ - アレグロ・ノン・トロッポ
2. ヴィヴァーチェ
3. アダージョ
4. アレグロ

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器を用いて演奏されます。

フルート 2
オーボエ 2
クラリネット 2
ファゴット 2
ホルン 4
トランペット 2
コルネット 2
トロンボーン 3
チューバ 1
ティンパニ
* 弦楽五部

初演

本作は1887年2月7日、パリにて初演されました。演奏はラムルー管弦楽団が行い、指揮はシャルル・ラムルーが務めました。この交響曲は、その初演者であるラムルーに献呈されています。

出版

総譜は1888年にG.アルトマン社から初版が出版されました。その後、1891年に同社がウージェル社に買収されたため、版権はウージェル社に引き継がれ、その後の出版もウージェル社によって行われました。グザヴィエ・ルルーによる4手ピアノ編曲版も、ウージェル社より出版されています。

創作意図

作曲家自身は、1887年3月に作家アドルフ・ジュリアンに宛てた書簡の中で、本作に触れる際、描写音楽よりも純音楽を重んじる姿勢を示唆しています。

評価と演奏史

ラロの《交響曲ト短調》は、発表当時から一定の評価を得ていたようです。例えば、1925年に『ミュージカル・クォータリー』誌に掲載された論文では、フランスの交響曲の中でも「屈指の快作」と評されています。

カミーユ・サン＝サーンス、セザール・フランク、ヴァンサン・ダンディといった、同時期に生まれたフランスを代表する交響曲群と並び立つ存在でありながら、長らく演奏機会に恵まれず、あまり広く知られていませんでした。特に、指揮者のトマス・ビーチャム卿が本作を「再発見」し、定期的に演奏するようになるまで、看過されがちでした。アメリカ合衆国においても、1970年頃まで主要なオーケストラによる演奏は極めて稀で、1931年のニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団による一度きりの上演が、ほぼ唯一の記録だったとされます。

録音に対する批評は様々です。例えば、ビーチャムが1959年にパリで録音した最初の主要な音源に対して、1961年の批評は「一聴に値しない」「素材も手法も平々凡々で冴えない」「人気の《スペイン交響曲》のような眩しさも旋律的な魅力もない」と否定的な評価を下しています。

一方で、アントニオ・デ・アルメイダ指揮による1976年の録音に関する批評では、「ラロが意図したことではないだろうが、循環主題がブラームスの《ピアノ協奏曲第2番》の開始と酷似している」点が指摘されつつも、4つの楽章の中では特に第2楽章が最も堅固で「管弦楽法が見事」であると評価されています。また、この批評では、ビゼーの《交響曲第1番》と「きわめて対等な存在」であるとも論じられています。

このように、本作は発表から時を経て、評価や演奏機会の面で複雑な変遷を辿ってきた作品と言えます。

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