交響曲第1番 (バーンスタイン)

レナード・バーンスタインの交響曲第1番『エレミア』は、作曲家が1939年から1942年にかけてペンを執った、彼にとって初めての交響曲作品です。この曲は、バーンスタイン自身が強く意識していたユダヤ系の血筋とアイデンティティを深く探求した内省的な性格を持っています。

作品の中心的なテーマは、旧約聖書に登場する預言者エレミアの苦悩と、彼が目撃したエルサレムの荒廃を綴った「哀歌」に由来しています。特に、全3楽章の最後に置かれた終楽章は、メゾソプラノ独唱が加わり、その歌詞にはエレミアの哀歌が原語であるヘブライ語で用いられています。また、終楽章だけでなく、作品全体を通して、ヘブライ式の聖書詠唱で用いられる特徴的な旋律が音楽的な動機として織り込まれており、ユダヤ的な響きが楽曲の根幹をなしています。このようなヘブライの音楽様式を取り入れる手法は、後の交響曲第3番『カディッシュ』において、さらに発展した形で追求されることになります。

この交響曲は、バーンスタインが無名だった頃に作曲され、当初作曲コンクールに出品されましたが、残念ながら入賞には至りませんでした。しかし、作曲家は父サミュエルへの深い尊敬と感謝を込めて、この作品を父に捧げています。

作品の初演は、1944年1月18日、作曲者自身の指揮によりピッツバーグ交響楽団によって行われ、聴衆から熱狂的な支持を得ました。その後、同年3月29日には、やはりバーンスタイン自身の指揮でニューヨーク・フィルハーモニックがニューヨーク初演を行い、こちらも大きな成功を収めました。これらの初演の成功は、若きバーンスタインの作曲家としての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。

作品は以下の3つの楽章から構成されています。

第1楽章「預言」：Largamente
第2楽章「冒涜」：Vivace con brio
第3楽章「哀歌」：Lento

終楽章に配置された「哀歌」は、メゾソプラノ独唱を伴い、エレミアの哀しみを深く歌い上げます。作品全体の演奏時間は約26分です。

楽器編成は以下の通りです。

ピッコロ
フルート 2
オーボエ 2
コーラングレ
クラリネット
バスクラリネット
ファゴット 2
コントラファゴット
ホルン 4
トランペット 3
トロンボーン 3
テューバ
打楽器群（ティンパニ、小太鼓、大太鼓を含む）
ピアノ
弦楽5部
* 独唱メゾソプラノ

交響曲第1番『エレミア』は、バーンスタインの初期における傑作であり、彼が自己のアイデンティティと音楽的な表現方法を模索した重要な出発点を示す作品として、今なお多くの人々に聴き継がれています。

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