交響曲第1番 (メンデルスゾーン)
メンデルスゾーンの「交響曲第1番 ハ短調 作品11, MWV N 13」は、彼がわずか15歳だった1824年の初頭から前半にかけて、ライプツィヒで完成されました。この作品は、彼がそれまでに手がけた12曲の「弦楽のための交響曲」に続くものとして構想され、草稿には「交響曲第13番」と記されていました。しかし、これまでの弦楽のための交響曲が出版の機会を得なかったため、初めてフルオーケストラのために書かれた本作が、出版社によって「第1番」として作品全集に組み込まれることになったのです。
この若き作曲家による交響曲の初演は、作曲から3年後の1827年2月1日にライプツィヒで行われました。ヨハン・フィリップ・シュルツが指揮するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって演奏されたこの初演は、聴衆や批評家から好評をもって迎えられ、『一般音楽新聞』にも好意的な批評が掲載されています。
さらに大きな成功を収めたのは、1829年5月25日にメンデルスゾーン自身が指揮したロンドンでの演奏会でした。フィルハーモニック協会の演奏会でのこの披露は、ライプツィヒでの初演以上に熱狂的に絶賛され、これが後にメンデルスゾーンが同協会の名誉会員に推挙される重要な契機となりました。
本作は、15歳という若さで書かれたにもかかわらず、交響曲として驚くほど高い完成度を誇っています。すでに一流の作曲家に匹敵する楽想と構成力を示しており、彼が16歳で「弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20」、17歳で「夏の夜の夢」序曲 作品21といった傑作を生み出す早熟の天才であることを鮮烈に予感させる作品です。自筆譜の草稿は、現在ロンドンのフィルハーモニック協会の図書館に大切に保管されています。
この交響曲からは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ウェーバーといった、彼に先行する偉大な作曲家たちの影響を強く感じ取ることができます。特にハイドンの交響曲第95番やモーツァルトの交響曲第40番、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」や交響曲第5番、そしてウェーバーの「魔弾の射手」序曲など、具体的な作品からの影響が指摘されています。第1楽章にはウェーバー、第3楽章にはベートーヴェン、そして第4楽章にはハイドンとモーツァルトの楽想が散見されます。
楽器編成は、当時の標準的な規模を採用しています。木管楽器はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットがそれぞれ2本ずつ。金管楽器はホルンとトランペットがそれぞれ2本。これにティンパニと弦五部（第2楽章を除く）が加わります。全4楽章で構成され、演奏時間は約33分。家庭での演奏ではなく、本格的な演奏会での披露を想定して書かれています。
各楽章の概要は以下の通りです。
第1楽章 アレグロ・ディ・モルト: ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。音階やアルペッジョを用いた力強い第1主題で幕を開けます。変ホ長調の穏やかな第2主題が続きます。展開部は簡潔ですが、再現部の後に続くハ長調の長大なコーダは、メンデルスゾーンの豊かな表現力を強く印象づけます。
第2楽章 アンダンテ: 変ホ長調、4分の3拍子。自由なソナタ形式に、変奏曲の手法も組み合わされています。ピアノ六重奏曲の緩徐楽章との関連が指摘される第1主題など、成熟した楽想と巧みな書法が光る楽章です。トランペットとティンパニはここでは使用されません。
第3楽章 メヌエット：アレグロ・モルト - トリオ: ハ短調から変イ長調、変則的な4分の6拍子。三部形式。メヌエットと名付けられていますが、ベートーヴェンを思わせるスケルツォ的な性格を強く持っています。第1楽章の主題と関連する主題で始まり、同年に作曲されたヴィオラソナタにも類似した旋律が見られます。トリオ部分はコラール風の穏やかな楽想。メヌエット再現への移行部には、ベートーヴェンの交響曲第5番終楽章への推移部を彷彿とさせる箇所があります。なお、ロンドンでの演奏時には、この楽章を自身の弦楽八重奏曲のスケルツォ楽章を管弦楽用に編曲したものに差し替えて演奏しました。
第4楽章 アレグロ・コン・フォーコ: ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。冒頭から、ハイドン、モーツァルト、ウェーバーといった作曲家たちの影響が色濃く現れています。展開部では、フーガのような厳格な書法が用いられ、持続音を経て再現部へと繋がります。最後のコーダはフガート（小フーガ）風の力強い盛り上がりを見せ、ハ長調で全曲を締めくくります。
この交響曲には、あまり知られていませんが、ピアノ連弾版とヴァイオリンとチェロのための二重奏版の2種類の編曲版が存在します。特にピアノ連弾版は、著名なピアノ・デュオであるタール＆グロートホイゼンによる録音もリリースされています。
総じて、このハ短調の交響曲第1番は、15歳のメンデルスゾーンがいかに並外れた才能を持っていたかを雄弁に物語る作品であり、彼のその後の輝かしいキャリアを予告する重要な位置を占めています。
この若き作曲家による交響曲の初演は、作曲から3年後の1827年2月1日にライプツィヒで行われました。ヨハン・フィリップ・シュルツが指揮するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって演奏されたこの初演は、聴衆や批評家から好評をもって迎えられ、『一般音楽新聞』にも好意的な批評が掲載されています。
さらに大きな成功を収めたのは、1829年5月25日にメンデルスゾーン自身が指揮したロンドンでの演奏会でした。フィルハーモニック協会の演奏会でのこの披露は、ライプツィヒでの初演以上に熱狂的に絶賛され、これが後にメンデルスゾーンが同協会の名誉会員に推挙される重要な契機となりました。
本作は、15歳という若さで書かれたにもかかわらず、交響曲として驚くほど高い完成度を誇っています。すでに一流の作曲家に匹敵する楽想と構成力を示しており、彼が16歳で「弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20」、17歳で「夏の夜の夢」序曲 作品21といった傑作を生み出す早熟の天才であることを鮮烈に予感させる作品です。自筆譜の草稿は、現在ロンドンのフィルハーモニック協会の図書館に大切に保管されています。
この交響曲からは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ウェーバーといった、彼に先行する偉大な作曲家たちの影響を強く感じ取ることができます。特にハイドンの交響曲第95番やモーツァルトの交響曲第40番、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」や交響曲第5番、そしてウェーバーの「魔弾の射手」序曲など、具体的な作品からの影響が指摘されています。第1楽章にはウェーバー、第3楽章にはベートーヴェン、そして第4楽章にはハイドンとモーツァルトの楽想が散見されます。
楽器編成は、当時の標準的な規模を採用しています。木管楽器はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットがそれぞれ2本ずつ。金管楽器はホルンとトランペットがそれぞれ2本。これにティンパニと弦五部（第2楽章を除く）が加わります。全4楽章で構成され、演奏時間は約33分。家庭での演奏ではなく、本格的な演奏会での披露を想定して書かれています。
各楽章の概要は以下の通りです。
第1楽章 アレグロ・ディ・モルト: ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。音階やアルペッジョを用いた力強い第1主題で幕を開けます。変ホ長調の穏やかな第2主題が続きます。展開部は簡潔ですが、再現部の後に続くハ長調の長大なコーダは、メンデルスゾーンの豊かな表現力を強く印象づけます。
第2楽章 アンダンテ: 変ホ長調、4分の3拍子。自由なソナタ形式に、変奏曲の手法も組み合わされています。ピアノ六重奏曲の緩徐楽章との関連が指摘される第1主題など、成熟した楽想と巧みな書法が光る楽章です。トランペットとティンパニはここでは使用されません。
第3楽章 メヌエット：アレグロ・モルト - トリオ: ハ短調から変イ長調、変則的な4分の6拍子。三部形式。メヌエットと名付けられていますが、ベートーヴェンを思わせるスケルツォ的な性格を強く持っています。第1楽章の主題と関連する主題で始まり、同年に作曲されたヴィオラソナタにも類似した旋律が見られます。トリオ部分はコラール風の穏やかな楽想。メヌエット再現への移行部には、ベートーヴェンの交響曲第5番終楽章への推移部を彷彿とさせる箇所があります。なお、ロンドンでの演奏時には、この楽章を自身の弦楽八重奏曲のスケルツォ楽章を管弦楽用に編曲したものに差し替えて演奏しました。
第4楽章 アレグロ・コン・フォーコ: ハ短調、4分の4拍子。ソナタ形式。冒頭から、ハイドン、モーツァルト、ウェーバーといった作曲家たちの影響が色濃く現れています。展開部では、フーガのような厳格な書法が用いられ、持続音を経て再現部へと繋がります。最後のコーダはフガート（小フーガ）風の力強い盛り上がりを見せ、ハ長調で全曲を締めくくります。
この交響曲には、あまり知られていませんが、ピアノ連弾版とヴァイオリンとチェロのための二重奏版の2種類の編曲版が存在します。特にピアノ連弾版は、著名なピアノ・デュオであるタール＆グロートホイゼンによる録音もリリースされています。
総じて、このハ短調の交響曲第1番は、15歳のメンデルスゾーンがいかに並外れた才能を持っていたかを雄弁に物語る作品であり、彼のその後の輝かしいキャリアを予告する重要な位置を占めています。
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