交響曲第2番 (リヒャルト・シュトラウス)

リヒャルト・シュトラウスの交響曲第2番 ヘ短調 作品12は、彼が青年期の1883年から1884年にかけて作曲した作品です。演奏時間は約42分。先行する交響曲が実質的に忘れられているため、番号なしで単に「交響曲ヘ短調」と呼ばれることもあります。作品番号はTrV.126などが付与されています。

この交響曲は、シュトラウスがまだ20歳前後の頃に書かれましたが、構成や管弦楽法に未熟さはなく、後に巨匠となる片鱗を既に示しています。また、ベートーヴェンをはじめとする19世紀の偉大な交響曲作家たちの伝統を学び、自己の音楽的な道を模索する意欲が感じられます。

楽器編成は、標準的な2管編成（フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、弦五部）です。

楽曲は4つの楽章で構成され、スケルツォと緩徐楽章が入れ替わったベートーヴェンの交響曲第9番と同じ楽章配置が採られています。第1楽章と第4楽章の展開部には、ベートーヴェン中期の作品からの示唆が見られます。

第1楽章 Allegro ma non troppo, un poco maestoso （ヘ短調、2/4拍子）
3主題によるソナタ形式。下降音形の導入に続き、主題が提示されます。ベートーヴェン第7番や「英雄」交響曲からの影響が指摘される箇所があります。静かに閉じられます。

第2楽章 Scherzo：Presto （変イ長調、3/4拍子）、トリオ（ハ短調）
ブルックナーを思わせる曖昧な調性や金管の活躍で開始します。特殊なリズム指示により変拍子のような効果も。中間部のトリオはブラームス風の重厚な音楽です。コーダでトリオ主題が回想され、簡潔に終わります。

第3楽章 Andante cantabile （ハ長調、3/8拍子）
幻想的で詩的な内容を持ち、ドヴォルザークの歌謡楽章を連想させます。抒情的な旋律の中に、第1楽章由来の金管モチーフが現れます。

第4楽章 Finale：Allegro assai molto apassionato （ヘ短調―ヘ長調、2分の2拍子）
ブルックナー風の激しい低音主題で始まります。終盤には先行楽章の主題が回想され、これはブルックナーの「ワーグナー」交響曲（1873年版）終楽章との類似が指摘されます。ベートーヴェンの「エグモント」序曲からの影響も示唆される箇所があります。主題回想後、ヘ長調に転じ、力強いコーダで明るく締めくくられます。

この交響曲は1884年12月13日にニューヨークで世界初演されました。ヨーロッパ初演は1885年10月に作曲者自身の指揮で行われました。1887年にはミラノで演奏され、第2楽章スケルツォが特に好評で繰り返し演奏されたという逸話があります。先輩作曲家ブラームスは、この作品に対し「全く結構」と評し、後に作曲技法に関する助言を与えました。

シュトラウス自身はこの交響曲の録音を残していませんが、ミヒャエル・ハラース、ネーメ・ヤルヴィ、若杉弘といった指揮者による録音が入手可能です。2台ピアノ版も録音されています。

この時期の他の作品に演奏会用序曲 作品80があります。シュトラウスの他の「交響曲」的な作品としては、内容は交響詩に近い《家庭交響曲》《アルプス交響曲》に対し、「交響的幻想曲」と銘打たれつつも実質的に交響曲と言える《イタリアから》があります。ブルックナーにも同じヘ短調の習作交響曲（第00番）が存在します。

もう一度検索