交響曲第3番 (バーンズ)

交響曲第3番 作品89について

アメリカの作曲家、ジェイムズ・バーンズが1994年に作曲した「交響曲第3番 作品89」は、吹奏楽のための壮大な作品です。この曲は、アメリカ空軍軍楽隊からの委嘱によって生まれましたが、作曲にあたって形式や演奏時間、難易度などの具体的な条件は一切なく、バーンズは自由に自身の感情を音楽に託しました。

作曲の背景

作曲者自身が述べているように、この交響曲は、生まれたばかりの娘ナタリーを亡くした直後に本格的に作曲に取り掛かられました。そのため、この作品はバーンズ自身の深い悲しみや苦悩、そして絶望といった感情が色濃く反映されています。彼はこの作品を「悲劇的」と表現しており、その言葉が示すように、楽曲全体を通して重く、感情的な雰囲気が漂っています。

この交響曲は、ベートーヴェンの「交響曲第5番」やマーラーの「交響曲第5番」、ショスタコーヴィチの「交響曲第5番」などのように、「暗から明へ」「苦悩から歓喜へ」という伝統的な構成を踏襲しています。これは、バーンズが自身の内面的な葛藤や感情の変化を音楽で表現しようとした結果と言えるでしょう。

初演と演奏

初演は1996年6月13日に大阪市のザ・シンフォニーホールで行われ、木村吉宏の指揮、大阪市音楽団の演奏によって世界初演されました。当初、委嘱者であるアメリカ空軍軍楽隊が世界初演を行う予定でしたが、演奏会が中止されたため、大阪市音楽団の演奏会が世界初演の舞台となりました。大阪市音楽団はその後もこの曲を積極的に取り上げており、1997年には東京公演で、2010年には第100回記念定期演奏会で再演されています。

演奏時間と編成

演奏時間は約38分で、各楽章の演奏時間はそれぞれ約13分、5分、13分、7分程度です。

この曲の出版は1997年、サザン・ミュージック・カンパニーから行われました。委嘱者のアメリカ空軍軍楽隊が編成に含めていたチェロパートは、出版時に割愛され、そのパートは他の楽器（主にバリトンサクソフォーンなど）に移行されました。

楽曲構成

この交響曲は、4つの楽章で構成されています。

第1楽章：Lento - Allegro Ritmico
ハ短調で、変形されたソナタ形式です。ティンパニとチューバの独奏で始まり、娘を失った悲しみや絶望が表現されています。八音音階に基づいて曲が展開され、重苦しく、絶望的な雰囲気が漂っています。

第2楽章：Scherzo, Allegro moderato
ヘ短調で、ABA形式です。行進曲風のスケルツォで、皮肉やほろ苦さをもって、尊大さやうぬぼれといった人間の性質を表現しています。この楽章も移調の限られた旋法が用いられています。

第3楽章：（ナタリーのために）Mesto
変ニ長調から変ロ短調へと展開する、ABCABC形式の楽章です。この楽章は、生後半年で亡くなったバーンズの娘ナタリーへの追悼として作曲されました。穏やかで美しい旋律の中に、娘への愛情と別れの悲しみが込められています。イングリッシュホルンが奏でるメロディーが印象的で、ハープや打楽器群が効果的に用いられています。

第4楽章：Finale, Allegro giocoso
ハ長調のソナタ形式で、心機一転、すべてを受け入れるという意思が表現されています。第2主題には、ナタリーの葬儀で歌われたルーテル教会の賛美歌「神の子羊」が引用されており、悲しみを乗り越え、新たな命の誕生を祝うかのような喜びが感じられます。作曲を終えた3日後には、息子ビリーが誕生しており、この楽章はビリーのための曲とも言えるでしょう。


この交響曲第3番は、ジェイムズ・バーンズの個人的な悲しみと喜び、そして人間としての感情が深く刻まれた、感動的な作品です。

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