交響曲第6番 (ドヴォルザーク)

交響曲第6番 ニ長調 作品60, B. 112

アントニン・ドヴォルザークが1880年に作曲した交響曲第6番は、彼の交響曲の中でも特に親しみやすい作品の一つとして知られています。正式な作品番号は作品60、そしてヤル・ヴォーグルによる作品目録ではB. 112が付与されています。この作品はドヴォルザークの交響曲としては初めて出版されたため、かつては「交響曲第1番」として広く認識されていました。

作曲の背景と初演

この交響曲は、当時著名な指揮者であったハンス・リヒターからの依頼を受けて作曲されました。ドヴォルザークの才能を高く評価していたリヒターに対し、作曲者はこの作品を献呈しています。リヒターは当初、世界的な名門であるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団での演奏を目指していましたが、残念ながらその計画は実現には至りませんでした。

本作の初演は、1881年3月25日、プラハにて行われました。指揮はアドルフ・チェフが務め、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の前身であるプラハ国民劇場管弦楽団が演奏を担当しました。初演は非常に好評を博し、その成功を受けて、翌1882年にはドイツのライプツィヒとイギリスのロンドン、そして1883年にはオーストリアのウィーンでも演奏されるなど、国際的な注目を集めました。特にロンドンでの演奏会は、献呈相手であるハンス・リヒター自身が指揮し、ロンドン・フィルハーモニック協会によって行われました。

作曲者の死後、この交響曲が演奏される機会は一時的に減少しましたが、1950年代以降、状況は変化します。カレル・アンチェルやラファエル・クーベリックといったチェコ出身の指揮者をはじめ、イシュトヴァン・ケルテス、クリストフ・フォン・ドホナーニ、ヴァーツラフ・ノイマン、オトマール・スウィトナー、イルジー・ビエロフラーヴェク、チョン・ミョンフンなど、数多くの指揮者たちがこの傑作をレパートリーに取り入れるようになり、再び広く演奏されるようになりました。

楽器編成

この交響曲は、以下の楽器によって演奏されます。

フルート2（うち1人はピッコロに持ち替え）
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
チューバ1
ティンパニ
弦五部（ヴァイオリン第1部、ヴァイオリン第2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

楽曲構成

作品は全4楽章で構成されており、第1楽章の繰り返しを含めた全体の演奏時間は約45分です。ドヴォルザークの多くの作品に言えることですが、特にこの交響曲においては、同時代のドイツの作曲家ヨハネス・ブラームスの影響がしばしば指摘されます。特にブラームスの交響曲第2番との関連性が論じられることが多いです。

各楽章の詳細は以下の通りです。

第1楽章：アレグロ・ノン・タント
ニ長調、4分の3拍子のソナタ形式で書かれています。牧歌的で穏やかな雰囲気を持つ楽章で、その主題の性格や構成においてブラームスの交響曲第2番との類似が指摘されることがあります。演奏時間はおよそ13分から15分です。
第2楽章：アダージョ
変ロ長調、4分の2拍子。自由なロンド形式（A-B-A-C-A-B-A'）が採られています。抒情的な美しい旋律が特徴的で、瞑想的な性格を持っています。この楽章からは、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の第3楽章からの影響が示唆されることもあります。演奏時間はおよそ10分から12分です。
第3楽章：スケルツォ（フリアント）：プレスト
ニ短調、4分の3拍子による三部形式。ボヘミア地方の民族舞曲である「フリアント」のリズムと性格を取り入れた、力強く活気に満ちた楽章です。初演時に非常に好評を博し、聴衆の強い要望によりアンコールとして再度演奏されたという逸話が残されています。演奏時間はおよそ8分から9分です。
第4楽章：フィナーレ：アレグロ・コン・スピーリト
ニ長調、2分の2拍子（アラ・ブレーヴェ）によるソナタ形式。輝かしく劇的なフィナーレで、情熱的な展開が特徴です。第1楽章と同様に、ブラームスの交響曲第2番の終楽章からの影響が指摘されることがあります。演奏時間はおよそ10分から12分です。

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