交響曲第7番 (パーシケッティ)

ヴィンセント・パーシケッティ 交響曲第7番 典礼風 作品80

ヴィンセント・パーシケッティ（Vincent Persichetti, 1915-1987）は、20世紀アメリカを代表する作曲家、ピアニスト、そして著名な音楽教育者でした。彼の幅広い創作活動の中でも、交響曲は重要な位置を占めています。本稿で扱う交響曲第7番は、『典礼風』（Liturgic）という副題を持ち、作品番号は80です。この作品は、1958年にセントルイス交響楽団から、彼らの創立80周年を記念する最初の委嘱作品として作曲されました。特定の記念事業のために書かれたという背景があります。

作品の初演は、作曲された翌年の1959年10月24日に行われました。初演を務めたのは、委嘱元であるセントルイス交響楽団自身であり、指揮は当時の音楽監督エドゥアール・ヴァン・ルモーテルが担当しました。

この交響曲のサウンドを特徴づける楽器編成は以下の通りです。
木管楽器：ピッコロ2、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、B♭クラリネット、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット。
金管楽器：ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ。
打楽器：ティンパニ、その他打楽器（奏者2名）。
弦楽器：弦五部。
イングリッシュホルンやバスクラリネット、コントラファゴットなどの特殊管楽器や、多様な打楽器の使用は、オーケストラの音色に豊かな色彩と深みをもたらしています。

楽曲は5つの楽章から構成されています。各楽章には以下のテンポ指示が付されています。
第1楽章：レント（Lento）
第2楽章：アレグロ（Allegro）
第3楽章：アンダンテ（Andante）
第4楽章：ヴィヴァーチェ（Vivace）
第5楽章：アダージョ（Adagio）
緩徐楽章で開始し、中間部を経て、再び緩徐楽章で閉じられる構成は、『典礼風』という副題とも関連して、作品に特別な性格を与えています。全体を通しての演奏時間は約28分とされており、現代の交響曲としては標準的な規模感です。

作品に付された『典礼風』（Liturgic）という副題は、その音楽的内容を示唆するものです。この言葉が具体的に何を意味するのかは、作曲者自身の明確な説明がない場合、解釈に委ねられます。一般的には「典礼」が持つ儀式的な厳粛さ、神聖さ、あるいは内省的で瞑想的な雰囲気を音楽で表現しようとした可能性が考えられます。特に、緩やかなテンポの楽章や、荘厳な響きを持つ部分に、この典礼的な性格が表れていると推測されます。特定の宗教的典礼音楽からの直接的な引用や関連があるかどうかは不明ですが、この副題は聴き手に対して特定のイメージや情感を喚起することを意図していると考えられます。

ヴィンセント・パーシケッティは、ペンシルベニア大学やジュリアード音楽院で教鞭を執り、数多くの作曲家を育てました。彼の作曲スタイルは多岐にわたり、独自の語法を用いて多くの優れた作品を生み出しています。彼は特に吹奏楽曲の分野で重要な役割を果たしましたが、交響曲においても堅固な構成と表現力を示しています。交響曲第7番『典礼風』は、パーシケッティの円熟期における管弦楽作品であり、委嘱という背景と示唆的な副題を持つことから、その存在感を示しています。

この交響曲に関するさらなる情報は、『最新名曲解説全集3　交響曲III』（音楽之友社）のような専門文献を参照することで得られます。

交響曲第7番『典礼風』は、ヴィンセント・パーシケッティの作曲技法と、委嘱作品にふさわしい威厳ある内容が結びついた作品です。『典礼風』の副題が暗示する精神性と共に、その豊かな響きと構成力は、聴く者に深い印象を与えるでしょう。

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