京戸

京戸とは

「京戸（きょうこ/けいこ）」は、日本の古代律令制度において、京（都）に居住する人々を指した言葉です。京とは、ヤマト王権によって築かれた中央集権的な都市であり、律令国家の中で独自の役割を果たしていました。京戸の成立は、国家の制度や社会構造の中での変化を反映しています。

京戸の起源と歴史的背景

京戸という言葉は、養老律令の文献には明記されていませんが、古令にその存在が確認されています。また、それ以降の日本の歴史を記録した『続日本紀』などでも取り上げられています。律令国家の形成において、都城の建設や戸籍・計帳の整備に伴う制度が導入され、京戸が生まれる時期については、いくつかの説があります。

例えば、庚午年籍によって導入された説や、飛鳥浄御原令や大宝律令の時に整備されたとする説が挙げられています。京戸となった住民については、遷都によって京が設置された地域に居住していた人々や、王権に奉仕していた官民が集められた結果とも言われています。

京戸の構成

京戸の中心をなしていたのは、貴族や官人層です。彼らは都城建設時に宅地を与えられ、その広さはそれぞれの位階によって異なりました。ただし、全ての貴族や官人が京戸として登録されていたわけではなく、多くは自らの本貫地から京に出向いて官に仕え、役目を果たした後は再び本貫地へ戻ることが一般的でした。

しかし、世襲化が進むことで、貴族層は次第に京に定住することを望むようになっていきました。さらに、皇子や皇女が臣籍降下した場合、京に本貫を登録されることがあり、これを「京貫」と呼びます。他の皇族も京戸として戸籍に登録されたり、地方の官人やその子孫でも京貫を申請することができました。

京戸の社会的役割

京戸の存在は、貴族や官人だけでなく、相当数の庶民の居住があったことも意味します。これらの庶民の中には一時的に京に出て、労働を行う者も多く、必ずしも全員が京戸というわけではありませんでした。国家は、無断で京戸に登録されることを防ぐため、浮浪や逃亡を厳しく取り締まりましたが、実際には戸籍と現実の状況が乖離することも多々ありました。

また、10世紀中期になると、戸籍に基づく民の管理が形骸化し、京戸の意義が薄れていったと考えられています。このような変化は、都市の管理体制や社会構造の変容と深く関連しています。

結論

「京戸」という概念は、日本古代の律令制度下での居住者の特徴を反映しており、貴族から庶民までが移動・居住していたことがわかります。京戸の存在は、政権の運営や社会構造、さらには歴史的背景を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

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