京王クヤ900形電車

京王クヤ900形電車：架線・軌道検測の要

京王クヤ900形電車は、京王電鉄が保有する事業用車両であり、架線および軌道の状態を検測することを目的として2007年に製造されました。営業列車に連結して走行しながら測定できる能力を持ち、その愛称は「Dynamic Analytical eXpress」の頭文字を取って「DAX（ダックス）」と呼ばれています。

概要

従来の京王電鉄では、軌道や架線の検測は夜間に線路を閉鎖し、モーターカーで検測車を牽引して低速で行っていました。この方法では静的な測定しか行えず、列車の動揺測定は別途行う必要がありました。そこで、測定精度を向上させるため、営業列車と同じ速度で検測が可能なクヤ900形が導入されました。

車体は8000系と同様のステンレス製ですが、外板はビードレスとなっています。レーザーを使用した非接触式の測定器を搭載し、レーザー基準器を搭載する部分は高い剛性が求められるため二重床構造が採用されています。

形式番号は当時最新鋭であった9000系のイメージを持たせるため900番台とし、下2桁は登場時に編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11を使用し、911とされました。現在、クヤ900形は2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれ、2日かけて京王線全線を検測しています。

車体

車体は8000系と同様の構造のステンレス製ですが、外板はビードレスです。車体両端には構内入換の便を図るため運転室が設けられており、運転室には乗務員用の乗降扉があります。運転台機器はコストダウンと牽引車デワ600形との共通化のため、6000系の廃車発生品が利用されています。使用していない時はカバーで覆われ施錠されています。

車体側面にはカラー帯と「DAX」のロゴが配され、構内運転時の視認性向上のため妻面にも側面同様の帯が巻かれています。側面には機材搬入用の扉が各側面に1箇所設けられていますが、高さは二重床基準となっています。側面には作業机付近に片側につき4枚窓が設けられ、うち各2枚は下降式で開閉可能です。

妻面上部には前照灯と尾灯が設けられ、スペースの制約からワイパーも窓上に設けられています。妻面には編成を組む電動貨車との行き来のために扉が設けられ、扉両側には車両間の移動時に利用できるよう手すりが設けられています。

走行機器

検測装置搭載のため、台車は9000系の軸梁式から円筒積層ゴム式に変更された東急車輛製TS-1035モノリンク式ボルスタレス台車が採用されています。

ブレーキ装置は将来牽引車が変更されることを想定し、7000系付随車と同様のナブテスコ製電気指令式空気ブレーキ装置(HRD-1)が採用されました。車輪にフラット（異常磨耗）が発生すると計測に支障するため、フラット防止装置が設けられています。京王では車両基地構内にもATSが設置されているため、構内運転用の運転台にもATSが設置されています。製造時にATCの導入が想定されていたため、ATC導入の準備が施されました。速度信号は連結される電動貨車の動力台車から得たものをジャンパ栓経由で受信します。床下にATS車上子を設置するスペースがないため、台車枠にATS車上子が設置されています。

空調装置・電源装置

屋根上には8000系と同じ出力64.0 kW(55,000 kcal/h)の冷房装置が搭載されています。検測中は牽引車とは別に空調を制御できるよう、新宿寄り運転台仕切壁背面に司令器が設置されています。暖房装置は作業スペース確保のため温風ヒーター式とされ、860 Wのもの6台が搭載されています。

空調、照明、検測装置などの電源は牽引車から交流200 Vの供給を受けますが、検測装置のメンテナンスなどの際には地上から交流200 Vを受電できるようになっており、両者が同時に供給された場合は車両側電源を優先するよう保護回路が設けられています。

検測装置

測定精度の向上のため、電動貨車編成中に組み込んで営業列車と同じ速度で検測が行えるよう、各種機器が搭載されています。室内には検測機器用の電源装置、制御装置、計測用装置、高圧室が、二重床部分にはレーザー基準装置や動揺加速度計が搭載されています。台車に光式のレール測定装置が設置され、屋根上には検測用パンタグラフ、投光器、観測用カメラなどが設けられています。パンタグラフは京王で唯一の下枠交差形PT-9001が採用され、検測時のみ上昇させています。

編成・運用

形式番号は当時最新鋭だった9000系のイメージをもたせるため900番台とし、下2桁は登場時編成を組んでいたデワ600形で使用されていなかった11を付番し、911とされました。

2007年11月に竣工した後、翌2008年3月末まで試験及び調整を行い、2008年4月から稼働しています。2ヶ月に1回、電動貨車編成に組み込まれて2日かけて京王線全線を検測しています。

登場時はデワ600形と編成を組んでいましたが、2016年4月以降は9000系ベースのデヤ901・デヤ902形と機材運搬用貨車サヤ912形で構成される4両編成を組んでいます。なお、運転室は構内運転用であり、本形式が営業線上で先頭に出ることはありません。


京王クヤ900形は、鉄道の安全運行を支える重要な役割を担っています。その活躍に今後も注目していきましょう。

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