京王デヤ901・902形電車

京王デヤ901・902形電車

京王デヤ901・902形電車は、2015年に京王電鉄が導入した事業用車両です。長年活躍してきたデワ600形の代替として、クヤ900形電車やチキ290形貨車の牽引を主な目的としています。9000系電車をベースに設計され、最新の技術と信頼性の高い部品が採用されています。

導入の背景

デワ600形は、6000系電車を改造した事業用車両でしたが、車体の老朽化や部品調達の困難さ、さらに京王電鉄で唯一の直流電動機使用車両であることなどから、置き換えの必要性が高まっていました。そこで、9000系をベースとした新造車両であるデヤ901・902形が導入されることになったのです。

車両の特徴

デヤ901形とデヤ902形はそれぞれ1両ずつ製造され、新宿向きと京王八王子向きの片運転台式制御電動車です。2両編成で運用されますが、それぞれにすべての機器が搭載されており、1両単独での走行も可能です。これは、柔軟な運用を可能にするための設計です。

車体

車体は9000系を基本としたステンレス製で、全長20メートル。側面に4箇所の両開き扉を備えています。前面は黄色に塗装され、旅客車両との識別を容易にするとともに、夜間の視認性を向上させています。側面にはクヤ900形との一体感を出すため、帯状のラッピングが施されています。

車内には、床下に搭載できなかったブレーキ制御装置や空気タンク、蓄電池などが搭載されています。中間連結面には、各車両8名分の座席が設置されており、乗務員の休憩スペースとして活用されています。座席部分以外は固定窓で、カーテンが設置されています。冷房装置は旅客車と同様のものが搭載されていますが、暖房装置は運転室のみに設置されています。

主要機器

主制御装置には、IGBTを用いたVVVFインバータ制御が採用されています。これにより、滑らかな加速・減速と省エネルギー運転が実現しています。主電動機は、出力170kWのかご形三相誘導電動機が採用されています。制動装置は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキが採用され、安全性と効率性が向上しています。

台車

台車は、9000系と同一の軸梁式軸箱支持ボルスタレス空気ばね台車が採用されています。先頭台車には、降雪時の除雪作業を行うための排雪板が取り付けられています。

集電装置

集電装置として、シングルアームパンタグラフが各車両に搭載されています。デヤ902のパンタグラフは、架線への追従性を考慮して反転して取り付けられています。

補助電源装置・空気圧縮機

補助電源装置として、出力170kVAの静止形インバータ (SIV) が、空気圧縮機として、毎分吐出容量1,067リットルのスクロール式電動空気圧縮機が各車両に搭載されています。

編成と運用

デヤ901とデヤ902は、通常、検測用のクヤ900形を2両目に、地下駅への電気設備の輸送に使用される運搬車サヤ912形を3両目に挟んだ4両編成で運用されます。また、降雪時には除雪列車としても運転される予定です。

今後の展望

京王デヤ901・902形電車は、京王電鉄の安全運行を支える重要な役割を担っています。今後も、その高い性能と信頼性で、京王電鉄の発展に貢献していくことが期待されます。

参考文献

『鉄道ピクトリアル』通巻767号「鉄道車両年鑑2005年版」
『鉄道ファン』通巻657号
『鉄道ピクトリアル』通巻923号「鉄道車両年鑑2016年版」
総合車両製作所『総合車両製作所技報』第5号

外部リンク

京王電鉄ニュースリリース
鉄道ホビダス

もう一度検索