京王5000系電車 (2代)

京王5000系電車

京王5000系電車は、2017年に運行を開始した京王電鉄の通勤形電車です。利用客の着席ニーズに応えるため、京王電鉄初の座席指定列車「京王ライナー」での運用を目的に開発されました。

概要

最大の特徴は、クロスシートとロングシートに転換可能なデュアルシート（マルチシート）を搭載していることです。座席指定列車として使用される際はクロスシート、それ以外の時はロングシートとして使用され、多様なニーズに対応できます。2017年9月29日から一般列車での営業運転を開始し、2018年2月22日のダイヤ改正から「京王ライナー」としての運転を開始しました。

当初は10両編成5本が製造され、その後、2019年、2022年、2024年にも増備が行われました。本形式の導入に伴い、7000系の初期編成が置き換えられています。また、2017年にはグッドデザイン賞を受賞しています。

外観

車体はステンレス製で、総合車両製作所製の「sustina」構体が採用されています。レーザー溶接により、滑らかで美しい仕上がりとメンテナンス性の向上を実現しました。衝突時の安全性を高めるため、車端部の妻構体に衝突柱を設け、車体強度向上のために構体骨組をリング状に配置しています。20m両開き4扉で、扉間に2枚の窓があるのが基本レイアウトですが、窓の幅が異なり、広い方の窓のみ下降窓となっています。

前頭部はFRP製で、先頭車運転台側は中間車より500mm延長されています。スカートは京王レッドに塗装され、前面窓上と側面中央部窓上にはフルカラーLED式の表示装置が設置されています。前面は大きく傾斜したシャープなデザインで、京王の車両としては初の試みです。カラーリングは黒を基調とし、窓上部に京王レッド、窓下部に京王ブルーの帯が巻かれています。運転台スペースの制約から、前面貫通扉は助士側に配置されました。

車内

内装は、多摩地域の自然や織物をモチーフにした、華やかな空間を演出しています。座席表皮は「多摩織」をイメージした高級感のあるデザインで、室内は上に行くほど明るい色調になっています。天井両側を凸曲面とすることで開放感を演出し、ガラス製の扉部仕切りと妻引戸の採用で奥行きを強調しています。床には静粛性の高い素材、側窓にはUVカットガラスを使用し、手すりには指紋が付きにくい電解加工が施されています。

京王電鉄初のデュアルシートは、クロスシートとロングシートに転換可能です。扉間には、偏心機構によって回転する2人掛け座席が配置され、座席幅の確保に工夫が凝らされています。車端部には固定式の3人掛け座席が設けられ、座席間には肘掛けが設置されています。全車両に車椅子・ベビーカースペースが設けられ、壁掛け型のヒーターと腰当てが設置されています。

室内灯はLED式の調光・調色式照明で、時間帯や用途に合わせて色調が変化します。各扉上部と客室天井部には17インチワイド液晶式案内装置が設置され、運行情報や広告が表示されます。放送装置は高音質ステレオ方式で、KEF社製のスピーカーが1両あたり8台設置されています。サービス機器として、電源コンセント、フリーWi-Fi装置、空気清浄機が設置されています。

客室扉には、ラック機構を有する電気式ドアエンジンが採用され、戸挟み防止機能や3扉閉機能、限定扉機能が搭載されています。2019年製造の編成からは、ドリンクホルダーや優先席車端部の肘掛けが追加されました。2022年製造の編成では、日本初となるリクライニング機能を備えたデュアルシートが採用されています。

乗務員室

高運転台構造を維持しつつ、機器配置の見直しや避難経路確保のため、乗務員室のレイアウトが大きく変更されています。運転台はユニット式で、3つの画面の運転台表示器が配置され、速度計や圧力計のほか、エネルギーモニタ機能も備わっています。主幹制御器はデッドマン装置付きのT形ワンハンドルマスコンで、保安装置としてATCとD-ATCを装備しています。また、ホーム検知装置が新たに備えられています。

主要機器

京王電鉄で初めて、主要機器への指令も伝送指令とするK-TIMSが採用されました。主制御装置はSiCハイブリッド素子によるVVVFインバータ制御装置で、主電動機は全閉型内扇冷却式かご形三相誘導電動機です。さらなる省エネルギー性を推進するため、車上蓄電システムが採用されています。制動装置は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキで、台車は軸梁式のボルスタレス空気ばね台車です。

形式構成

5000系は、以下の形式で構成されています。

デハ5000形：主制御装置、パンタグラフ搭載の中間電動車
デハ5050形：電動空気圧縮機、補助電源装置または車上蓄電装置搭載の中間電動車
サハ5500形：付随車
サハ5550形：付随車
クハ5700形：新宿寄り制御車
クハ5750形：京王八王子寄り制御車

運用

京王線・都営新宿線の一般列車および「京王ライナー」として運用されています。臨時列車としても、元日の「迎光号」「迎春号」、行楽期の臨時列車「Mt.TAKAO号」「高尾山ハイキング号」、ゴールデンウィーク期の「キッズパークたまどう号」、東京競馬場での競馬開催日などに充当されています。

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