京都市伏見区の町名

京都市伏見区の町名について

京都市伏見区は、その歴史と多様な地域性から、複雑な町名体系を持っています。この記事では、伏見区内の町名について、その成立過程や変遷を詳細に解説します。

伏見区の概要

京都市の南部に位置する伏見区は、東西に長い形状をしています。区域は、伏見城があった桃山地区、酒造業で栄えた伏見地区を中心に、北の深草地区、東の醍醐地区、そして西と南の郊外地区を含んでいます。東部は醍醐山を中心とする山地で、西部は宇治川や桂川沿いの平地です。南部には、かつて巨椋池があった干拓地が広がっています。

区境は、東は滋賀県大津市、北は京都市山科区、東山区、南区、西は向日市、長岡京市、大山崎町、南は宇治市、久御山町、八幡市と接しています。2024年9月現在、面積は61.68平方キロメートル、推計人口は270,553人です。区域は、かつての紀伊郡、宇治郡を中心に、西部は乙訓郡、久世郡、綴喜郡の一部を含んでいます。

区内には、伏見稲荷大社、醍醐寺、伏見城跡、明治天皇伏見桃山陵、史跡寺田屋、京都競馬場など、歴史的・文化的な名所が多数あります。

伏見区は、1931年4月1日に成立しました。これは、同日に廃止された伏見市と周辺の27の市町村が合併し、京都市が市域を拡大したことによるものです。当初、伏見市、紀伊郡の竹田村、深草町、堀内村、下鳥羽村、横大路村、納所村、向島村、宇治郡の醍醐村が合併して伏見区となりました。その後、1950年12月1日には乙訓郡の久我村と羽束師村が、1957年4月1日には久世郡の淀町が編入されています。

町名の概要

京都市内の町名には、「大原来迎院町」のように旧村名や大字名を冠するものと、「亀屋町」や「菊屋町」のように単独の町名があります。伏見区では、旧伏見市の中心部は単独町名が多く、その他の地域は旧大字名などの地区名を冠した複合町名が一般的です。

1980年時点で、伏見区の公称町数は630町でしたが、1997年と2006年の土地区画整理事業に伴う町名・町界の整理により、現在では642町となっています。ただし、地図や郵便番号一覧には、公称町名として収録されない町名も見られます。

旧伏見市地区

町数の変遷

伏見区の中心部、旧伏見市地区は、豊臣秀吉が築いた伏見城の城下町として発展しました。1718年の記録によると、当時伏見には263の町名があり、各町は9つの組に分かれていました。また、地方附と呼ばれる27の町も存在しました。1831年から1845年の間には、町数は265町となり、北組は12組に分かれ、地方附は23町となりました。

幕末から明治時代初頭にかけて、町が分割されたり、周辺の町が編入されたりして町数に変動があり、1874年には267町となりました。その後、1877年に49町、1889年に31町が周辺の村に編入され、残りは188町となりました。1877年に六地蔵村に編入された15町のうち9町は、現在の宇治市に属しています。

1929年の伏見市成立時には、町名の再編が行われ、町数は168町となりました。これは、「丁目」をそれぞれ1町と数えた場合です。

行政区画の変遷

1868年、伏見地区は17番組に編成され、269町を統括しました。1872年には番組が廃止され、16区に再編されました。1874年には4区域に編成され、町数は267町となりました。

1877年には49町が周辺の村に編入され、1879年には伏見区が設置され、町数は219町となりました。1881年には伏見区が廃止され、紀伊郡に合併しました。その後、連合戸長役場が設置され、名称が変更されました。

1889年には、町村制施行に伴い紀伊郡伏見町が成立しました。この時、28町が深草村に、3町が向島村に編入され、残りの188町は大字として「字○○」に改称されました。同時に景勝村が編入され、伏見町は189の大字で構成されました。1929年には伏見町が市制を施行し伏見市となり、町名が「○○町」に改称されました。20町が整理され、旧伏見地区の町数は168町となりました。また、景勝が8町に分割され、伏見市の町数は176町となりました。

町の呼称の変遷

行政区域の変更に伴い、同じ町でも呼称が変化しています。例えば、旧伏水第一組に属していた町名は、明治12年時点では35町でしたが、現在は4町です。以下は、町名の変遷の例です。

明治22年（1889年）深草村へ編入された町: 直違橋片町、直違橋南一丁目、直違橋北一丁目、直違橋二丁目〜直違橋十一丁目（10町）、稲荷御前町など
昭和4年（1929年）に合併・編入・改称された町: 墨染横、七軒、南新→墨染町、堀ノ上→京町十丁目に編入、北恵美酒→撞木町など

旧伏見市以外の地区

旧深草町

紀伊郡深草町は、1931年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。深草町は、1889年に深草村として発足し、1922年に町制を施行しました。1889年に旧伏見第一区に属していた35町のうち28町を編入し、これらは深草町の字となりました。その後、これらの字は「深草」を冠称する30町に編成されました。

深草村には、上記のほか深草、福稲、大亀谷の3つの大字があり、これらは117町に編成されました。大字深草は74町、大字福稲は26町、大字大亀谷は17町となりました。また、1949年には深草勧進橋町が編入され、1949年には深草西浦町が合併により誕生しました。1970年には、深草西浦町は再編され、深草西浦町一丁目〜深草西浦町八丁目となりました。

旧醍醐村

宇治郡醍醐村は、1931年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。醍醐村には、醍醐、日野、石田、南小栗栖、北小栗栖の5つの大字があり、大字醍醐は「醍醐」を冠称する67町に編成されました。その後、町名町界の変更により、66町となっています。

旧堀内村

紀伊郡堀内村は、1931年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。堀内村には堀内、六地蔵の2つの大字があり、これらは「桃山町」を冠称する55町に編成されました。その後、町名町界の変更があり、「桃山町」または「桃山」を冠称する町名は68となっています。

旧竹田村、下鳥羽村

紀伊郡竹田村は、1931年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。竹田村は「竹田」を冠称する23町に編成され、その後27町となっています。紀伊郡下鳥羽村も、1931年に編入され、「下鳥羽」を冠称する24町、「中島」を冠称する12町に編成されました。その後、町名町界の変更により、「下鳥羽」を冠称する町は31町、「中島」を冠称する町は12町となっています。

旧横大路村、向島村、納所村

紀伊郡横大路村は、1931年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。横大路村は「横大路」を冠称する32町、「横大路下三栖」を冠称する8町、「横大路三栖」を冠称する5町に編成されました。

紀伊郡向島村も、1931年に編入され、「向島」を冠称する30町に編成されましたが、現在は33町となっています。紀伊郡納所村は、1931年に編入され、「納所」を冠称する11町に編成されました。

旧久我村、羽束師村、淀町

乙訓郡久我村と羽束師村は、1950年に京都市に編入され、伏見区の一部となりました。久我村は「久我」を冠称する6町、羽束師村は「羽束師」を冠称する4町に編成されました。

久世郡淀町は、1957年に伏見区に編入され、「淀」を冠称する12町に編成されました。淀町は、かつての淀城下の町と周辺の村々が合併してできた町です。

備考

伏見区の町名については、参照する資料によって異同が見られます。ここでは、主に「角川日本地名大辞典」、「京都市区の所管区域条例」、「公職選挙法に基づいて行う各種選挙の投票区（伏見区）」、「京都市伏見区の郵便番号一覧」といった資料間の差異について解説します。

例えば、稲荷山官有地や桃山町古城山、桃山町丸山、桃山町二ノ丸、桃山町治部少丸といった町名については、資料によって扱いが異なります。また、醍醐高田、醍醐宮ノ下町は、廃止された町名ですが、郵便番号一覧には掲載されています。

この記事では、町名のリストや町数の記載は、便宜上「角川日本地名大辞典」を基準としています。伏見区の町名は、その複雑な歴史を反映しており、資料によって異なる解釈が存在することをご理解いただければ幸いです。

まとめ

京都市伏見区の町名は、その歴史的背景と変遷を物語っています。この記事では、旧伏見市地区から、編入された旧村々の町名まで、詳細に解説しました。伏見区の町名について理解を深める一助となれば幸いです。

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