京都機械工具

京都機械工具株式会社（KTC）



京都機械工具株式会社（きょうときかいこうぐ、英: KYOTO TOOL Co., Ltd. 、略称:KTC）は、京都府久世郡久御山町に本社を置く、日本を代表する工具メーカーです。1950年の創業以来、高品質な工具の製造にこだわり続け、自動車産業の発展と共に成長を遂げてきました。同社製品は、プロの整備士からDIY愛好家まで幅広く支持され、日本国内のみならず海外でも高い評価を得ています。

創業と発展



KTCのルーツは、第二次世界大戦前にまで遡ります。戦前、京都機械株式会社は日本海軍航空隊へ工具を納入していました。戦後、同社の技術者であった齋藤喜一、山崎宗次郎、宇城正行の3名が独立し、1950年に「京都機械工具株式会社」を設立しました。創業当初からトヨタ自動車の車載工具として採用されたことが、その後の業界での確固たる地位を築く大きなきっかけとなりました。

日本の上質工具の代名詞とも言われるKTCは、その後の日本の自動車産業の発展と共に業績を拡大。通産省優良自動車部品A級認定や防衛庁銘柄指定を受けるなど、その品質の高さは広く認められました。

現在、KTCはアイテム数・生産量ともに国内No.1を誇るハンドツールメーカーであり、KTCブランドと高級ブランド「ネプロス」を中心に、多種多様な工具や関連商品を製造・販売しています。

製品の特徴



KTCの製品は、その品質の高さと耐久性に定評があります。他国の老舗工具メーカーと比較すると歴史は浅いものの、品質維持のため下請けを使わず、自社工場での一貫生産体制を敷いています。特に熱間鍛造技術は世界トップクラスと評されており、日本のメーカーならではの丁寧な品質管理が特徴です。

製品の表面仕上げは梨地が基本ですが、高級ラインのネプロスシリーズでは鏡面仕上げを採用。既成の製品だけでなく、特注品にも対応するなど、ユーザーの多様なニーズに応えています。

2013年現在では、製品の幅を自転車用工具にまで広げ、新たな市場を開拓しています。また、その高い技術力は国際的にも評価され、2010年までに76ヶ国から見学者が訪れています。

沿革



創業まで



KTCの創業メンバーは、戦前から工具製造に携わっていました。齋藤喜一は津田駒工業のエンジニアでしたが、京都機械株式会社にスカウトされ入社。山崎宗次郎と宇城正行も、それぞれ海軍工廠退職後、京都機械に入社しました。1940年代には、京都機械は日本海軍航空隊向けの整備工具専門工場となり、最盛期には3000人を超える従業員が働いていました。

敗戦後、アメリカ製のソケットレンチやスウェーデンのバーコ社の工具に感銘を受けた創業メンバーは、「一流志向」を抱き、高品質な工具製造を目指すようになりました。山崎は、自動車生産を再開したトヨタへいち早くアプローチし、車載工具としての採用を取り付けました。しかし、1950年頃に不況のため、京都機械は工具部門の整理縮小を決定。これを受けて、齋藤・山崎・宇城の3名は独立を決意しました。

創業以降



1950年5月、齋藤、山崎、宇城の3名は京都機械を退社し、京都市南区比永城町に小さな工場を借りて、新たなスタートを切りました。トヨタ自動車が車載工具の納入元を京都機械からKTCに切り替えた後、朝鮮戦争特需も追い風となり、KTCの業績は右肩上がりに成長しました。

1950年8月2日、京都機械工具株式会社が正式に発足。当初はスパナを外注で製造していましたが、1950年10月頃から翌年にかけて、京都市南区東九条烏丸町に一貫生産が可能な工場を設け、生産体制を強化しました。

その後、1952年に御池工場を建設し、本社を移転。鍛造工場も設け、完全な一貫生産体制を確立しました。1950年代から1960年代にかけて、JIS表示の取得、防衛庁や日本国有鉄道への納入指定を得るなど、事業は拡大の一途を辿りました。

1960年代には、伏見工場を建設し、規模を拡大。しかし、近隣への騒音問題や国道1号枚方バイパスの開通により、1966年からは久御山町での土地買収を開始しました。1968年には久御山工場が操業を開始し、2000年には伏見工場を閉鎖し、本社機能も久御山町に移転しました。

1970年には、輸出製品に特化した北陸ケーティシーツール株式会社を設立し、輸出にも注力しました。1980年には、大阪証券取引所第二部と京都証券取引所に上場し、企業としての成長を加速させました。1990年代には、高級ブランド「ネプロス」を発表し、新たな顧客層を獲得しました。

2000年代には、トヨタF1チームとのテクニカルパートナー契約を締結するなど、モータースポーツ分野にも進出。2003年には、企業ミュージアム「ものづくり技術館」をオープンし、自社の技術と歴史を公開しています。

近年の動向



2013年には、大阪証券取引所と東京証券取引所の現物株市場統合に伴い、東京証券取引所2部に上場しました。また、長年運営してきたホームセンター事業から撤退し、経営資源を工具事業に集中する方針を打ち出しています。

主な製品



KTCは、様々なニーズに対応するため、多種多様な工具を製造・販売しています。その中でも代表的な製品を以下に紹介します。

Dツール / TOOL SAFE



1982年に発売された高級工具セット「TOOL SAFE」。創業者の一人である齋藤が、スナップオンに負けない品質の工具を作ろうと企画したもので、コストを度外視した高品質な製品です。シリアルナンバー付きの限定品として発売され、瞬く間に完売しました。

ミラーツール



1982年に発売された創立35周年記念品。鏡面仕上げの美しい工具で、「世界に飛躍するKTC」をコンセプトに、プロメカニックのプライドを満足させることを目指しました。日産自動車の最高級車にも搭載された実績があります。

ネプロス



1995年に発売された同社の最高級ブランド。「new professinal satisfaction」の頭文字から名付けられました。より強く、使いやすく、美しいをコンセプトに開発された、鏡面仕上げが美しい工具です。グッドデザイン賞も受賞しており、鈴鹿サーキットの公認工具にも指定されています。

プロフィットツール



プロのメカニック向けに開発された、強度を保ちつつ極限までスリムに軽量化された工具です。通常の工具では届かない箇所での作業を可能にします。

KTC



同社のスタンダードブランド。スパナ、ソケットレンチなど、一般的な工具から専門的な工具まで、3000種類以上の商品をラインナップしています。プロ・アマチュア問わず、幅広く愛用されています。

ものづくり技術館



2003年4月に本社に併設された企業ミュージアムです。KTCの歴史や製品、製造技術などを展示しています。見学は予約制ですが、無料で利用できます。

その他



KTCは、モータースポーツチームへの協賛も積極的に行っています。


また、創業時代には熱間鍛造で特許を取得していましたが、現在は冷間鍛造に技術を改良して用いています。

KTCは、長年にわたり培ってきた技術と経験を生かし、これからも高品質な工具を提供し続けていくでしょう。

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