京風島田

京風島田（きょうふうしまだ）

京風島田は、日本の伝統的な女性の髪型である島田髷の一種で、特に京都の芸妓さんが特定の機会に結うことで知られています。この髷は、江戸の芸者さんが結う「潰し島田」とは異なり、「投げ島田」と呼ばれる系統に分類されるバリエーションの一つです。

かつて、京風島田は大正時代頃まで比較的広く見られる髪型でしたが、時代の変化と共に結われる機会は減少しました。現代において、この髷が結われるのは非常に限られた特別な場面に限られます。主に、京都の各花街で催される伝統的なおどり（例えば、都をどり、鴨川をどり、北野をどりなど）の期間中に設けられるお茶席で、芸妓さんがお点前を披露する際や、これらの舞台で上方舞を舞う際の正装として用いられます。

正装時には、長襦袢の衿をきちんと返し、黒地に五つの家紋が入った紋付きの着物を着用し、「重箱」と呼ばれる独特の帯結びをします。この格式高い装いに合わせて、京風島田が結われるのです。

京都の芸妓さんの髷結いには、かつて地毛を用いるのが一般的でした。1950年代頃まではほとんどが地毛結いでしたが、1960年代半ばになるとかつらを利用する方が増え始め、地毛とほぼ同数になりました。その後、髷を結う際はかつらが主流となり、特に江戸風に鬢（びん：顔の横の髪）が大きく張り出した形状のかつらが一般的になっていきました。しかし、興味深いことに、現代でもこの京風島田を結ぶ場合に限り、自身の地毛を使って結髪する芸妓さんがいらっしゃいます。これは、京風島田が持つ伝統的な意味合いや、地毛で結うことによる独特の風合いが重んじられているためと考えられます。

京風島田の最も際立った特徴は、その独特な形状にあります。投げ島田の系統に属するため、他の多くの島田髷が比較的平らに結われるのに対し、京風島田は髷の根元から立ち上がりが垂直に近く、髷の後部が大きく後ろに突き出しています。これにより、頭部の後方に独特のボリュームと優美な曲線が生まれます。

京風島田に合わせる髪飾りもまた、洗練された落ち着きと艶っぽさを兼ね備えています。髷の根元部分には、「丈長（たけなが）」と呼ばれる銀色の装飾がかけられます。また、鼈甲（べっこう）製の櫛（くし）と笄（こうがい）を一揃いで用い、翡翠（ひすい）などの玉をあしらった簪（かんざし）を髷の根元（根挿し）に挿します。花簪については、華やかで多くの花をつける舞妓さんのものとは異なり、花が一つか二つと非常に控えめなものが選ばれます。これらの髪飾りの組み合わせは、派手さを抑えつつも、成熟した芸妓さんならではの上品さと色香を感じさせる、落ち着いた艶っぽい印象を与えます。

現代において、京風島田は結われる機会が限られているため、見かけることは稀ですが、その独特の形状とそれに合わせた控えめながらも上品な髪飾りは、京都の伝統文化の中で育まれた美意識と、芸妓さんの格式高い装いを象徴する重要な要素の一つと言えるでしょう。特に、地毛で結われる機会が少なくなった現代において、京風島田が今も地毛で結われることがあるという点は、その伝統的な価値と特別な位置づけを示しています。

もう一度検索