人工衛星の軌道要素

人工衛星の軌道要素について

人工衛星の軌道要素とは、宇宙空間における人工衛星の軌道を数学的に記述するためのパラメータ群です。これらの要素を用いることで、衛星の位置や運動を正確に予測し、運用計画を立てることが可能になります。軌道要素は、ケプラーの法則に基づいた以下の要素で構成されます。

ケプラー軌道要素

元期 (Epoch)：軌道要素が適用される基準となる日時。
平均運動 (Mean Motion) または 半長軸 (Semi-major Axis)：
平均運動は、1日に軌道を周回する回数を示し、軌道の大きさを間接的に表します。軌道の周期と密接な関係があります。
半長軸は、楕円軌道の長軸の半分であり、軌道サイズを表します。平均運動と半長軸は、ケプラーの第3法則によって関連付けられます。
離心率 (Eccentricity)：軌道の楕円の形状を表す指標で、0から1の間の値を取ります。0は真円、1に近いほど細長い楕円となります。
軌道傾斜角 (Inclination)：軌道面と赤道面のなす角度。軌道の傾きを表します。
昇交点赤経 (Right Ascension of Ascending Node, RAAN)：軌道が赤道面を南から北へ横切る点（昇交点）の、春分点からの角度。
近地点引数 (Argument of Perigee)：軌道面内での楕円の長軸方向を示す角度。
平均近点角 (Mean Anomaly)：元期における衛星の軌道上の位置を示す角度。

軌道要素の意味

軌道のサイズと形状：楕円軌道のサイズと形状は、半長軸または平均運動、そして離心率によって決定されます。
軌道の配置：軌道面が地球や宇宙に対してどのように配置されるかを表すには、軌道傾斜角、昇交点赤経、近地点引数が用いられます。
元期における衛星の位置：平均近点角は、特定の日時（元期）における衛星の軌道上の位置を示します。

軌道要素の変動

地球は完全な球体ではなく、赤道半径が長い回転楕円体であるため、また月や太陽の重力、太陽輻射圧、大気抵抗などの影響により、軌道要素は常に変動します。特に、低高度の衛星は上層大気による抵抗（ドラグ）の影響を大きく受け、徐々に高度が低下します。そのため、軌道要素は定期的な更新が必要です。

軌道要素の取得

アメリカ合衆国のNORADは、10cm以上の人工天体をレーダー観測し、軌道情報を測定しています。これらの情報は、軍事機密を除いてWebで公開されており、TLE（Two Line Element）と呼ばれる形式で提供されています。

TLEの例

以下は、TLEの例です。


ADEOS II
1 27597U 02056A 03154.76144939 -.00002335 00000-0 -96480-3 0 1637
2 27597 98.7101 228.1327 0000680 94.9473 265.1789 14.25759802 24471


Line 1：衛星カタログ番号、国際識別子、元期、軌道要素の変化率、抗力項などが含まれています。
Line 2：衛星カタログ番号、軌道傾斜角、昇交点赤経、離心率、近地点引数、平均近点角、平均運動、元期における周回数などが含まれています。

代表的な衛星軌道と軌道要素

静止軌道：
軌道傾斜角：0度
離心率：0（真円）
平均運動：1回転/日
平均近点角と近地点引数：静止点の地表の経度によって決定
静止トランスファ軌道：
近地点高度：数百km
遠地点高度：約36,000km（静止軌道高度）
モルニヤ軌道：
軌道傾斜角：約63度
近地点引数：270度
平均運動：約2回/日
極軌道：
軌道傾斜角：90度（順行）または270度（逆行）
主に低軌道衛星で使用

関連事項

地球
天体
ヨハネス・ケプラー
天文学
半同期軌道 (SSO)
回帰軌道 (SSO) (Heliosynchronous orbit)
準天頂軌道 (QZO)

外部リンク

CelesTrak：NORADの軌道要素データを入手できます。
軌道要素フォーマットの説明
* きどうようそのひみつ

これらの情報を通じて、人工衛星の軌道要素についての理解を深めていただければ幸いです。

もう一度検索